風の行方


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
 
hydeの体温で温められた香水が、芳醇な薔薇の香りを放ち始めた。
サクラを下から睨み上げるhydeは、少し前かがみになりながら
パジャマの前を手繰り寄せていた。
香り立つ薔薇の香りを
身体の中に閉じ込めようとでもしているかのようだった。
 
顔が上気していくのをhydeは感じた。
自分の身体から立ち上る薔薇の香りで酔いそうだ。
首、鎖骨、胸と順を追って触れたサクラの指の感触が何度も蘇る。
心臓がドキドキしてきた。
 
そして、hydeを見下ろすサクラは、
真っ赤な顔で小柄な身体をますます縮こませているhydeに、
どう声を掛けるか考えあぐねていた。
 
薔薇の香りは男を惑わせるという屋台の女の片言の日本語を思い出した。
そんな効用まったく信じはしなかったのだが、
今のhydeは明らかに、自分が何気なく触れたことに過剰な反応を示した。
相手が男だから遠慮なくしてしまったのだけれど、
それに対してこんなに反応されると何とも気まずい。
 
「あ、感じちゃった?」
 なんてか〜るく言ったところで、hydeのこの様子だと腹に一撃喰らうかもしれない。
かといって、
 
「すみません」
と謝るのもなんだか変だ。
 
「なんで感じちゃったの?」
hydeの新たな生態を知るために、一番そこのとこが聞きたいとも思うのだが、
これは最低だろう。
 
「え〜と」
ま、とりあえずシャワー浴びて飯食えばとでも言ってこの場を濁そう。
 
用意した台詞を頭の中で反復し、さ、言うぞと身構えたところで、
サクラはhydeから思わぬ先制を受けた。
 

「やっちゃんのバカ! もうさいてー!!!」
 

顔を真っ赤にしたhydeはそう言うと、
ボタンを外したパジャマの前が肌蹴ないよう両手でしっかりと衣を持ち、
サクラの横をすり抜け、シャワールームへと駆けて行った。
hydeが身を翻した後には、薔薇の香が漂った。
 


「・・・・・・・・おにゃのこだ」
 

自分が蒔いた種とはいえ、
思いもかけずhydeの新たな生態を中途半端にかじってしまったサクラは、
見事に脳天を打ち抜かれた。
 
その後、このままだとtetsuに何を言われるか分ったものではないと踏んだサクラは、
レストランに戻る前に香油で手を拭き、さらに石鹸で香水のついた手を洗いまくった。
 
しかしその日の撮影現場には、
風が吹く度にシャワーで落としきれなかった仄かな薔薇の香りが
hydeの身体からは一日中ただよった。
 
そして、hydeの香りを風が運ぶたび、思わずその行方を探すサクラもいたのであった。

 
よろしければご感想を
 
08.06.17


 きほんはSH7
 TOP