「本当に彫ったんだな」
これから抱こうとするその身体に、今までにはない飾りを見つけ櫻澤が言う。
「綺麗やろ」
その飾りをなぞる指の感触に感じながら「それ」が呟く。
これまでとは違う雰囲気を醸し出している「それ」に多少戸惑いながら、
櫻澤は尚も問い続ける。
「痛くなかったのか? にしても、なんで翼なんだ?」
その問いかけにそれが振り向く。
途端に異彩を放し、
人の気配が消し飛んだ。
そして、櫻澤を冷たい視線で射貫きながら言葉を吐く。
「痛いかって、お前が聞くんか?
ふん。一度思いっきり引き千切ったくせに。
その痛みに比べたら全然たいした事なんかなかったで?」
櫻澤の心臓を鷲掴みにして「それ」が応える。
「それに、これでもう、どんなことがあっても、もがれることはないやろ?
・・・・そんな、傷ついたような顔。
俺にするんはお門違いやないんか? サクラ?」
あの時、俺の翼は墜ちていく速度に追いつかず、
ひるがえして上昇することもできなかった。
その時に、何があっても羽ばたき切れる翼を
俺は手に入れてやると思ったんだ。
お前のことを許してなんてやらない。
お前に過去との決別など与えない。
俺が墜ちた暗闇を、
俺を抱いて、この翼を見る度に思い知れ
忘れるな
あぁ、断罪も贖罪の判も甘んじて受けよう。
だが、そして免罪を受け、
犯した罪が消えたと言われることのほうが耐えられない苦しみのこともある。
「おおかたのことはしてきたつもりだったけど、まだしなくてはいけないことがあったな」
そういうと櫻澤は、自分の前に悠然と立ちはだかる「それ」の手を取り、
接吻けると囁いた。
「何よりも深く、そして一生、その羽根に誓う」
すると、
この世のどんな生き物よりも慈悲深い悪魔は、
この世のものとは思えない無慈悲な天使の顔で、
「何を誓うのか」と聞き返すこともせず、