今日みたいに濁った空の日は、
その色を写している海だって俺の目には果てしなく灰色に近く。
空との境界線だって曖昧で気分だってぼやけてくる。
ツアーだってもうすぐ始まるのに、
KAZやスタッフとの打ち合わせだってまだある。
機材の調整や、最終的な音合わせ、
自分の体調管理だってしなくちゃならない。
色々な微調整があって、
きっと見えない問題が山積みなんだろう。
そう思うと少し怖くなる。
なのに、どうしてこんなところにいるんだろう?
KAZだってたかだか5分ぐらいのガンつけに根負けして、
あっさり引き渡すなよ(俺を)
こんなに風が強くって、
前日の小春日和が嘘みたいに寒くって、
なのに俺はというと結構薄着で、
冷えた砂浜の上に腰を下ろして、
時々高めに打ち寄せる波しぶきを全身に浴びていたりして。
あぁ、今頃風邪引きましたなんて言えないから
もうそろそろ車に戻ったほうがいいだろうな。
そう思いはするくせに、
身体のほうは一向に動く気配はない。
風と一緒に顔に打ち付けてくる前髪を
右手で掻き上げてそのまま。
スタジオを出て、車から降りるまで一言の会話もなく。
でも、考え込んでも仕方のない、
そんな問題ばかりを抱え込んでいる今の俺には、
思考を邪魔されないそういう扱いがとても心地よかった。
夕刻に海に着いて、車から降りろと言われて、
それからはやっぱり一言の会話もなくて、
車中でのくだらない考え事に疲れて、
ぼーっと灰色の海と空を見ている。
「さみぃなぁ」とか、「波かかるなぁ」とか、
「俺らの他に誰もいねぇなぁ」とか、
「海と空だなぁ」とか・・そんなことしか思わずに。
だけど、俺を連れてきた張本人は、
そんな俺をほったらかしにして、
それが目的で来たのかと思うくらいに、
楽しそうに波と戯れていたりする。
その姿は、灰色に滲んだ海と空をバックに、
いつもと変わらず、
俺の目にくっきりとした色調で映っている。
「な〜」
「あ〜?」
「こうしてるとどっちがどっちか分からへんようになってくるな」
「俺の下にあるのが海で、上が空だ。
分からなくなったらまた教えてやるぞ」
ついでに俺がサクラで、お前がhydeね
なんだったら後でじっくり教えよか?
混沌とした光景の中で、
明確な輪郭を浮かび上げながら、
単純明解だけど自信ありげに伝えて。
「・・・・・・・・・アホや」
「そろそろ戻るか?」
何もかもがぼやけて、曖昧で、
上と下で、下と上で、
正しくって間違いで、
間違いで正しい。
そんな世界で、
心も身体も奪われたからそうなのか、
それとも、
そうだったから奪われたのか。
今となっては分からないし、
どっちだっていいけどね。
ただ、
それだけはいままでだって俺の中にあって、
そしてこれからだってずっと、