もし、次に目を開けたときには、きっと!
頭に輪っか、背中に羽根で満面の笑みの金髪碧眼の子供が、
迷える子羊と戯れながら俺の顔を覗き込んでいるに違いない!
と思っていたのに。
壁づたいに寝転んだ俺を覗き込んでいたのは、
黒い髪のむさい奴だった。
おまけに顔を相当叩かれていたらしく、
痛い・・・顔が・・・ジンジンするぜっ!
「ったくっ! 何すんや! 腫れたらどうしてくれる!」
何だかこんなことで怒っていたんじゃないのになぁ?
そう思いながら、少しトーンダウンした怒りをむさい奴に再び向ける。
するとそいつは、
「あぁ、どうしようかと思った。このまま起きないんじゃないかと思った」
なんて、蒼白で世にも情けない顔を臆面もなく晒した。
「死んじまったらどうしようかと思ったんだ。凄く怖かった、悪かった」
ドラマに出てくる陳腐な台詞みたいで、それ相応の台詞を返してやる。
「薬の次は人殺しで、積年の確執か? はたまた痴情のもつれか?
ラルク元ドラマー転落の人生ってとこやな。ホンマ、それ怖いわ」
しかし、思いのほか相手の落ち込みようは
俺の些細な悪意のレベルを優に超え、
俺にとんでもない爆弾発言を落としてくれた。
「hydeがいなくなるという恐怖を実感したんだ。死ぬほど怖かった。」
あぁ、コイツの無意識が放つ言葉ほどタチの悪いものはないんだ。
少し歪みそうになった顔を見られるのが嫌で、
ヘタリこんでいる相手の首に抱きつく。
「サクラ。 お前、俺が本当に死んだらどうする?」
「前にもそんな話しただろが?」
「うん。で、どうする?」
「うん。俺、女々しい奴だから、やっぱり死ぬかなぁ?一緒に」
真向かいに座り直して、
酷い言葉を言った後だから、
酷い思いをさせた後だから、
尚更、目を見つめて話す。
「死ぬような勇気があるんやったら俺のクローンでも創れよ」
「誰に生ませんだよ」
「知るか」
「クローンって同じ遺伝子を持つってだけだろ? 記憶は?」
「共有できるわけないやろ」
「その目は?」
「遺伝するとは限らへんな。むしろ遺伝子操作される」
「その傷も?」
「あるわけない」
「男か女かも? 顔も、身長も、その声も、ムカつく性格もだろ?」
「数点気になるけど、意図的にある程度は特定できるらしいね」
「クローンったって全く同じじゃないんだな」
「まあね」
「だったら俺にとっては意味がないな。おまけに寿命も短い。
何度も死に際見るなんてごめんだし、第一、子供相手じゃ
SEXできねぇ」
健康的なこの男の思考に少し顔がほころぶ。
「でもなサクラ、俺は死んだら、多分、
もう一度お前にも会いたいって思うやろな」
「怖ぇな」
「その為ならケルビム倒してでも、その木の実を食べるかも」
「??? 未練タラタラだな?」
「迷える子羊やからな」
「でも、クローンのお前は俺のこと覚えてねぇじゃん」
「だからお前、もう一度俺のこと口説け」
「すんげぇ歳の差じゃね? 見込みねぇ、弱気になっちまうなぁ」
「心配すんな。どのDNAにもお前の傷を刻んどいてやるから。
何度でもお前のこと惚れてやるから」
「だから、俺が死んだら・・・・」
そこまで言うと、もう次の言葉を聞きたくないとばかりに
「SAD MAD(哀れなキチガイ)野郎はお前だ」
と、サクラはすごく哀しそうな、嬉しそうな、