歓声と拍手。
う〜〜と、唸って「ええ加減離れろ」とhydeから抗議されたサクラが離れると、
待ってましたとばかりに3人のシンガーから頬にキスを受けた。
「Happy merry Christmas!」
「あ・ありがと」
「Be merry and happy!」
「あなたも」
「Be a joyful one!」
「サ・サンキュ〜」
サクラは?と見ると、hydeから取り上げたサングラスを掛けて
観客の拍手と歓声にピースで応えていた。
「///// アホッ!!」
ニット帽を目深に被りなおし、サクラの袖を引っ張ると、
背中に受ける拍手を痛く感じながら、
hydeは足早にその場を立ち去った。
ごめんなさい。
俺たち皆さんに祝福を受けるような関係やないです。
しかもヤロー同士です。
「全く。 お前、アレ知ってたんやろ?」
「なんのことかなぁ〜?」
「ふざけたやっちゃな。 彼女に悪いとか思わへんのかっ?」
「彼女?」
「プレゼント、早う選ばな間に合わへんのとちゃうの?」
「プレゼントって・・・・・ねーちゃんのな」
「ねーちゃん? 飲み屋の?」
「違う。 うちのねーちゃん」
「本番って・・・・お前、そーゆー奴だったの?」
「・・・・・何勘違いしてんだよっ!
姉貴には常日頃から迷惑掛けっぱなしだったからだよっ!」
「じゃ本番は今日ってなんやねん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、お前んちって、クリスマスのお祝いなんてするんか?」
「(するわけねーだろ) あー、まぁね」
「そーゆーことかぁ。 へー、仲がええんやなぁ」
「お前、それ、わざと?」
「何が?」
勘がいいんだか悪いんだか。
それとも自分とのことなんか、
頭の中に最初からこれっぽちもないのか。
「『クリスマスには奇跡が起こる』なんて言ったの誰だよ」
「いや、こんな男前が二人、クリスマスにあぶれてるなんて奇跡やろ?」
こういうところは悲しいくらいに冴えている。
「じゃ、ねーちゃんのプレゼント買いに行くか」
「・・・・いいよ」
「何で?」
「来るときに適当に買ったから」
「何だよーーーー」
その後、今年のクリスマスは家族で過ごすイメージを植え付けて
しまったサクラは、あっさりhydeに「んじゃ、俺帰るね」と言われた。
「クリスマス気分もお陰様で満喫できたし、はよう家帰って寝るわ」
まぁいいか。あんまりがっついてもどうせ逃げられる。
あんな風にすっとぼけてるけど、そうそう全く自分の気持ちに
気づいていないわけじゃないだろう。
今度は渋谷駅までクリスマス色の明治通りを楽しんで、
美味しそうなケーキでも買って帰るよと、
歩き出した小さな後ろ姿が人混みに紛れそうになる。
今、どんな表情をしているのか不意に見たくなった。
「hyde」と大声で呼び止めるのは忍ばれた。
「秀人!」
振り向いたhydeは大きな目を見開いていた。
人垣に消え入りそうなびっくり眼がなんだか可愛くて、
思わず目が細まった。

瞬間、hydeの頬がさっと紅く染まったのにサクラは気づき、
あんなhydeの顔を見れただけでも「クリスマスの奇跡だ」と思った。
煙草に火を点けて、もう一度視線を戻したときには、
hydeの姿は雑踏に紛れ込み、消えていた。
今夜、彼にクリスマスの奇跡とやらは起こるのだろうか?
できたら自分が関わったこと以上の出来事は起こらないで欲しい。
ケーキを買ったら誰にも逢わずに大人しく家に帰って早くねんねしろ。
そしたら少しは、クリスマスのhydeを独占できた気分にもなる。
「俺、いつからこんなに我慢強くなったんだ?」
これこそ『奇跡』じゃないかと、