底にたゆたういくつもの


  

hydeは思う。
隣に無邪気で無防備な姿を晒して寝ている男を見ながら。
 
激しく愛し合った後、疲弊した身体にお互いの温もりが心地よく、
濃密な思いに包まれながら抱き合って寝てしまうことがある。
 
だが、少しの身じろぎに意識を戻すのはいつもhydeの方だ。
 
すると、さっきまで二人で共有していたあの時間が、
急に途切れてしまったような感じがする。
 
そんな時、その隣で寝ている男の顔を見ながら思うのだ。
 
自分はこの男のことを好きという感情以上の思いで思っている。
 
心地の良い低音の響きに癒されることがある。
抱き寄せられて、背中を撫でられる掌の温もりに、
身体の中の芯が溶かされていくように感じることがある。
浴びせられた言葉に心掻き乱されて、一日がざわつくこともある。
 
そんな無様な自分がいるのも、
こんな滑稽な関係があるのも、そう、この男を
 
多分、愛しているからだ。
 
しかし、それは「多分」という程度の範疇を抜けきらず、
すっきりとした確信となるまでには到底至らない。
 
自分の心など、どこまで行ってもどこにも辿り着けない暗闇だ。
もやもやとした頭を抱え、痛む胸を押さえ、
自分はいつもその暗闇の中を手探っている。
 
だが、その暗闇を怖がることなく降りていくことが大切なのだ。
そして、その底に辿り着いた時・・・・自分は・・・・
 
 
そんな取り留めのない思考の溝に落ち込んでいる時に限って、
意識を薄く戻らせたサクラがhydeの身体を両手で強く抱え込む。

  
 
「あぁ・・・・」
 
その度にhydeは、どこまでも深く永遠に広がるような暗闇の中で、
唯一迷わず確かに自分を導いてくれるだろうその手に全てを委ね、
今はまだ底の見えない意識の深淵に向かい、
いつかそこに辿り着いた自分が迷わぬことを願いながら、
そっと言葉を落とすのである。
 
 
「あぁ・・・・・愛してる」

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06.12.05
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