かたしろ


携帯の着信音でサクラは目覚めた。
サブディスプレイには「HYDE」の文字が浮かび上がっている。
ベッドの隣からは、hydeの姿はいつの間にか消えていた。
 
「サクラ、寝てた?」
「寝てた。 お前、今、どこ?」
 
「起こしてごめん。 ホテルに帰ったとこ。 今日はプチ打ち上げやって
 たからね」
「あれから行ったのか!?」
 
「うん」
「元気だなぁ」
「鍛えてますからね」
 
「ところで、teっちゃんが気にしてたんやけど」
「なんだよ」
 
「hyde君(櫻澤家のスーパードルフィー・わからない方は『続盲愛』をどう
 ぞ)元気?」
「あー、最近家を空けがちだったから箱に入れっぱなしだな」
 
「やっぱり。 なんかこの頃妙に気になってな」
「埃被っちゃ可哀そうだろ」
 
「teっちゃんがゆうとったけどな、人形ってのはガラスケースで飾っとく
 んと、抱いて可愛がってやるんと二通りおるらしいで」
「ふーん」
 
「分かっとるやろうけど、hyde君はもちろん後者やからな」
「面倒臭せー」
 
「お前、『形代』馬鹿にしたら痛い目みるぞ」
「なんだ、その『かたしろ』ってのは」
 
「人形って可愛いと思う時もあるけど、怖いと感じる時もあるやろ。
 俺、思うんやけど、人形を可愛がるってのは自分の「思い」を人形に預け
 るのとおんなしことなんやないかなぁって。
 そんでな、人形がその人から預けられた「思い」っちゅーのはさ、人形が
 負う「業」みたいなもんかなぁって」
「「業」ねぇ」
 
「「業」を預ける以上、やっぱ可愛がってやらんと重荷に耐えれんやろ」
「んじゃ、やっぱりhyde君相手にマス掻いてやんねーとってことか?」
 
「呪い殺されろ!」
「冗談だよ。 だからお前、今夜俺のところに来てくれたのかぁ?」
 
「は?」
「ふふん。 いーとこあんじゃねーの。 それに、なんか今日のお前微妙に
 初物っぽかったしなぁ」
 
「・・・・・サクラ、ごめん。 俺、ちょっと疲れてるから。 またな」
 
ホテルのベッドの中で携帯を切ったhydeの耳に、「照れちゃってー」などと
微笑んでいる能天気な男の声が聞こえるようであった。
 

「おいっ!!!」
 
大声で執事(再び登場)を呼びつける。
 
「俺寝るからさ、本とアレ持ってきてくれない」
「本と・・・・・アレとは何でございましょうか?」
 
「だから本と、いつも寝るとき一緒のアレだよ」
「ですからアレとは?」
 
なぜだか最近の執事は自分に対して妙に態度が強情な時がある。
 
「だから人形だよ。 ZIGZOジグソウの人形」
 
たかが人形だが、「寝る前に人形持ってきて」というのはなんだか恥ずか
しい。だからアレと言ったのに、執事はさらに執拗に問いかける。
 
「どの人形でございましたかな。 人形のお名前なぞお教えいただければ
 間違いなくお手元にお持ちいたしますが」
 
なんか俺、最近こいつが腹を立てるようなことでもしたかな?
 
疑念に思いながらも、人の気持ちに波風を立てることを嫌い、少々躊躇い
もありはするが、特に今はすぐにでも気疎いことは忘れて眠りにつきたい
hydeは、
観念して人形の名前を口にした。
 
「やっちゃん・・・・・持ってきて」
 
「かしこまりました。 ご本と「やっちゃん」をすぐにお持ちいたします」
 
執事から本と「やっちゃん」を受け取ったhydeは、彼が部屋から出ると、
その気配が消えるのを確認するや毎夜寝る前に読む本なぞほっぽり出し、
 
「やっちゃ〜ん、こわいよー」
 
頭からシーツを被りベッドにやっちゃんと一緒に潜り込んだ。
 
 
そして、翌日。
hydeの言うことももっともだと、久方ぶりに箱から「hyde君」を出し、「hyde
に激似とはいえ、妙に色っぽいね」などと、まんざらでもない気持ちで
「hyde君」を抱えてMステを鑑賞していたサクラは、ラルクのメンバーがそ
の日の夕方の飛行機で
東京入りしたことをhydeの口から聞き、
 
 
 
 
その途端に自分の膝の上に座らせていたhyde君が「ずしり」と重くなったこ
とを、
暗い部屋で一生懸命に気のせいだと思うことに徹していた。
 
 
【執事より注釈】
HYDEISTにご入会されていらっしゃらない皆様へ
「やっちゃん」というのは、HYDEISTのwebペーパー紙『Hydeist Times』で
HYDE様の持ち物という形でご紹介させていただいた映画『SAW』に出てくる
腹話術のお人形でございます。
最近のHYDE様は、必ずこちらを枕もとに置いてご就寝されるのでございます。
HYDE様の守り神のようなものでございましょうか。
いつまでたってもお子様っ気のお抜けにならないHYDE様でございます。
(やれやれ)
 
 
少し遅れて2007年版ホラー
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07.09.10

基本はSH6
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