「おらーーー、サクラーーー!!! エエ加減トイレから出ろーーー!!
中で一体何しとんねんっ! 俺、俺、漏れそうーーーーーーーー!!」
という叫び声とドアを叩く音でトイレでうたた寝をしていたサクラは目を覚ました。
遊びにきたhydeとなんだか流れでテレビで放映していた面白くもないハードボイルドな
映画を酒を飲みながら観ていた途中であった。
寝ぼけ眼でトイレから出ると、顔面蒼白で鬼のような形相のhydeに「ドアホ!」と罵られた。
hydeがトイレに入った直後に、もの凄い勢いで便器に落ちる水音が聞こえてきた。
寝ぼけているサクラは「うんうん(今日もhydeは元気そう)」と頷きながらリビングに戻って
いった。
リビングにあるTVの画面は真っ白だった。俺は一体どれくらいトイレに籠城していたんだ?
と思いながら、ほっとした表情で手を拭き拭き部屋に入ってきたhydeを前に座らせると、
これこれこんな変な夢を見ていたんだぞ、トイレが長くなったのはこういう理由で、決して
中で恥ずかしいことをしていたわけではない、ましてやhydeがいるときにそんなことをしな
きゃいけない理由などないだろうと立て板に水の如く、愛しいhydeに話して聞かせた。
櫻澤泰徳。
素面の時も話は長いが、酒が入って寝ぼけているときは更に長く最悪に脈絡がない。
hydeも長い付き合いでこういうことは慣れっこになってはいるのだが、
ふらりと遊びにいった櫻澤家で、生理的現象で死ぬほど苦しい思いをさせられたことには
非常に腹が立っていた。
「やっぱり、すねに傷持つ奴が見る夢はそれなりに暗いし歪んでんな」
こんな程度では立った腹は納まらない。
「モリタとかミノウタモンとか(並べ替えて読んでみましょう)、ストレートにがっちゃんとか、
お前アホちゃうの? 大の男が見るような夢とちゃうやろ!
ほんと、お前ってば・・・・・・・・・ばぁ〜か!!」
モリタとかミノウタモンとかがっちゃんとかは何を言われても仕方がないなとは思っていた
が、最後の「ばぁ〜か!!」にはちょっとカチンときた。
なぜなのかわからないが、hydeのこの時々出る「ばぁ〜か」にはもの凄く抵抗がある。
「お前ね、そうは言うけど、俺にそういう夢を見させるhydeにも原因があると思わない?」
「何ゆってんだよ。 サクラが見る夢に俺が責任持てとでも言うん? ばぁ〜か!!」
「いや、対象がお前だから俺の夢がああなったんだとは思わないの?」
「サクラが見る夢だから俺がああなっちゃったんやろ? ばぁ〜か!!」
「いや、どっかの学者が言ってたぞ、全ての夢は全ての経験から引き出されるって。
それにな、無意識のうちに脳が情報処理をしていたものを整理して夢となって見るのが
予知夢、まぁ的確な情報処理による予想だな、になるってよ・・・・hyde、お前さ・・・・」
「・・・・・確かにぶっ殺してやろうかとか思ったね、俺も若かったしね。 でもそうせんでよかっ
た、ほ〜んまによかった。こ〜んな「ぶぁ〜か」そうしたとこで何の徳にもなんないもんね」
「ばぁ〜か」を3回連呼された上に、今のは「ぶぁ〜か」になっていた。
ちょっと酔っているサクラはすこしキタ。
いや、相当キタ。
「俺の脳味噌の情報処理結果によると、hydeは俺がいながらバンドのドラマーとそういう関
係で尚かつそのドラマーを三行半つけて殺した挙げ句、俺とデキてしまうという。おまけに
がっちゃんという不穏要素まで持っている上に、芸能界二大名司会者まで取り込んでいる
なんて、hyde、お前って奴は・・・・・」
「????お前がいながらドラマーと・・・で、殺してお前とデキ・・・がっちゃんで・・・・・
アホかお前! 酔うてるやろ? ほんっとわけわからん。 ばぁ〜かばぁ〜か・・・・・
ばぁ〜か!!」
「ばぁ〜か!!」 を連呼するあたり、どうやらhydeも多少酔っているようである。
多少酔っているため無意識に脳が的確な情報処理をしてでもいるのか、さりげなく帰り支度を
しながら身体はジリジリ玄関へと移動していたのだが・・・・・
約10分後
「う・・・さくらのばぁ・・・・か」
櫻澤泰徳の自前の銃身は、hydeの体内にめり込んでいた。
「Lies & Truth」
あの頃の自分やhydeは、何が真実で何が嘘なのかを追い求めすぎていた。
今では嘘にも誠にも上手に付き合えることが出来る。
出口のない迷路も、自分が作り上げていただけだ。
弾の出ない歪んだ引きがねで何度も誰かに空撃ちされるより、面倒でも自分で引きがねを
引く楽しさと、その開放感にはもう病みつきだ。
自分の身体の下で自分のことを「ばぁか」だと言うhyde。
この男に自分は、これから先も引きがねを引くことができるのだろうか?
「ばぁ〜〜か」
しかし、首筋に回る汗ばんだ両腕に、いつもこの時だけは真実を感じると思う自分は、hyde
が言うように本当に馬鹿だと思うサクラだった。
終
07.07.15