身体くらいは預けさせてあげよう




「怖いねぇー、あの人」
ソファに座って雑誌に目を落としたままのhydeが言った。
あの人というのはどうやらサクラのことらしい。
 
「だって獰猛そー」
 
サクラの何が怖くて獰猛そうなのかtetsuが聞く。
 
「分からへんけど、そんな感じがすんねん」
 
hydeは面倒くさそうにちらりと大きな目でtetsuを見上げた。
hydeと顔を合わせて話すのはちょっとアレなtetsuは、ソファ
の横に少し間をおいて座る。
 
サクラは確かにずけずけとものをゆうけどな、そんでいきな
りわけ分からへんことゆうけど。
きっとあれはサクラなりの気ぃの使い方と思うんや。
はよう俺らとうちとけたいんとちゃうやろか?
 
きっとあいつ、ほんまはごっつ「甘えた」やで。
 
そう言うと、hydeは手を叩いて喜んで、ソファに足を乗せ、
雑誌を読んでいた
身体を横向きにし、tetsuにもたれてきた。
 
もたれかかってきたhydeの体重。
軽いなとtetsuは思う。
少し遠慮がちに体を預けている。
 
 
「じゃ、どんな時にこの人獰猛ーって感じるん?」
 
質問を変えて聞いてみた。
 
「んー・・・・声」
 
声? 声ね。
それから? 
・・・・・・・・・・・・・・・
あ、それでおしまい?
ごめんな、雑誌読んでる時に話しかけて。
 
「声〜、なんか獰猛そう〜」
ぱらり、hydeが雑誌のページをめくる。
忘れた頃に話が続いていく。
 
「あ、ドラム」
ぱらり。
 
 
ドラム。それは俺が目をつけたドラマーやしね。
ドラムが獰猛ってええ感じちゃん! あかんの?
 
「シングル・ストロークだけで叩かれたりすると、奥に獰猛さを
潜ませて
いる感じとかせぇへん?」
 
「あぁ、徐々にフロア・タムなんか組み込んでやってたけど、次
は何が
くるの?ってぞわぞわする感はあったな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
あ・あれ?
俺、今一人で喋ってた?
 
hydeを覗きこむと「今年クル芸能人」なんて特集をつまらなそ
うに見ている。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
 
「それから〜」
 
まだ続いてたかー。
 
「腕が太いのに指が細いよね」
 
ふーん、そんなとこよう見てんなぁ、hyde。
そんで、それのどこが獰猛やねん?
 
「そういうギャップね〜」
 
「ゆうてることもよう分からへんし」
 
「目。 目ぇが獰猛って感じぃ。 怖いわー」
 
たったこれだけの会話。
雑誌を読むhydeに投げたからか、ずい分な時間を費やしたよ
うにtetsuには
感じられる。
そして、hydeが挙げるサクラが獰猛と感じるところを聞く度に、
tetsuは気
分がだんだんと重くなっていく。
 
サクラがhydeに何かをしたわけじゃない。
普通にhydeと会話をし、hydeを見ているだけだ。
そしてhydeは、そんなサクラを獰猛だと感じる。
理由は分からないけど、獰猛だと感じるから。
怖い。
 
 
そんなところなんやろな。
でもそれな、俺にも覚えがあるんよhyde。
初めてhydeの声を聞いた時、なんて声なんやと思おたんや。
LIVEを観るたびに次はどんなhydeが観られるのか、ぞわぞわ
したんやで。
身体だってこないに小そうて細っこいのに、LIVE
では大きく感じてた。
わけ分からへんことゆうんは、hydeだって相当や。
それよりもほんまに分かってへんで、わけ分からへんことよう
ゆうてるやろ?
いつもはほわんとしてんのに、目ぇむくと猛禽類みたいやし。
サクラが獰猛とゆうんなら、初めて出会った頃から今やって、
hydeは俺に
とってとんでもなく獰猛なんやで?
 
「つまりそれってゆーのは・・・・・」
「ん〜?」
 
tetsuは言いかけて言いよどんだ
 
それってゆーのはさ、つまり捕らえられちゃったってことやろなぁ?
抗いも嫌がりもする前に捕らえられちゃったから、あまりにも相手
がしなや
かに自分を捕らえたもんやから、余計に獰猛に感じるん
よ、きっと。
 
「hyde。 俺やkenちゃんは怖ないん?」
「kenちゃん〜・・・・ うん、ぜんぜん」
 
「俺は?」
「teっちゃんは・・・・・時々怖い」
 
「どんな時?」
「怒った時ぃ〜」
それ普通やろ。
 
 
 
 
 
 
軽かった重みが急に増した。
hydeはtetsuに身体を預けたままうとうとし始めていた。
膝にあった手がずり落ちても、もうなんの反応も示さない。
 
 
獰猛。
怖いと思いながらその獰猛さに憧れていたりもする。
尖った爪が身体に食い込んで、熱い血が流れ出るのを期待して
待っていたりする。
 
そんな思いが満ちたとき、hydeはそこにどんな意味を見つけるのか?
ちゃんと見つけられるのか?
 
 
すぐに見つけられへんでも俺は教えてやらへんからな。
くっそ。
 
 
閉じられていても大きな目。
長い睫毛。
お人形さんみたいや。
 
いつまでも可愛いお人形でなんかでhydeがいるわけないし、それは
出会った時から覚悟していたことだし、ましてやそうしている必要だ
ってないんだから。
だから。

だから目覚めるまではいつでもね、こうして俺に身体を預けて。
 
2007.10.03
基本はSH6
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