acid pain 


「hydeが風邪を引いて隔離中だから見舞ってやって欲しい」
と、メグちゃんから電話をもらったtetsu。
当のhydeは作曲兼、ご子息に風邪をうつされては大変と、
都内のサブマンションへメグちゃんに追い出されて3日経つという。

何故自分が見舞いに行かないのかと聞くと、
「病原菌を自宅に持ち込みたくないから」だそうだ。

hyde、お前、病原菌扱いなんや・・・・・。

そんな状況に甘んじているhydeが超可笑しい。
全く、親ばか子煩悩振りもいい加減にせいと言ってやりたい。
 
3日間放置されている部屋の惨状を思うと気が重い。
反面、3日間弱りきっているhydeってのはご馳走かもー(嬉)
 
しかしこの3日、都内マンションに引きこもっていたということは、
hydeがフリーだったというわけで、
こんな美味しい状況をあの男が嗅ぎ付かないわけがない。
これは、あのハイエナよりも先に着いてhydeの身柄を確保せねば! 俺が!
 
最初のお役目目的とは些か趣の違う使命感を掲げ、tetsuがマンションの扉を開けると、
既にそこにはhydeの普通サイズの靴の横に無駄にでっかい靴が並んでいた。
 
「ちっ! 遅かったかーー!」
 
急いでリビングに向かうと、ドア向こうから何やら不穏な会話が聞こえてくる。
 

「あのさ、俺、ちょっと熱っぽいねんけど」
「俺がいるからだろ」

「・・・・・・寒気もすんねん! ぬ・脱がすなや!」
「すぐに温まる」
 

そこまで聞いて部屋に飛び込む気が削がれたtetsuだったが・・・・・
 

「風呂にも3日程入ってないんや!」
 

ビシッ!
tetsuの自制心がひび割れる音がした。
 
3日風呂に入ってない? 3日も? 風呂に? 
3日掃除機をかけないくらいはまだ我慢できる。 しかし、風呂は!
ということは何か! 俺のあの可愛くて綺麗なフィギュアいやhydeが、
髪の毛ボーボーの髭面の垢まるけだとでもいうのか!
 
一大事!
 
「hydeーーー!!!」
「うわっ! て・てっちゃん? いつからいてたん?」
「来たな! ラルクのリーダー!」
 

あぁ、すごい部屋だ・・。いや、そんなことはどうでもええ。 
hyde、流石に髭は剃ってたみたいやけど、お前、髪の毛しとってるやん。 
顔も生彩ないで、栄養つけなな・・・バナナ持ってきてやったし。 
それに、その半分脱がされてるパジャマ、3日間着っぱなしなんやろ?

・・・・・・・・・もしかして、し・下着もか?・・・・・・・・・
 

「うわぁああぁぁああああ〜〜〜〜〜〜! hyde、今すぐ風呂入れ!
 早く脱げ、そんなもんっ! と・兎に角風呂や!」

「おらぁ〜〜〜、ラルクのリーダー! 何、血迷ってやがるんだよっ! 
 hydeの服を脱がすのは俺に決まってるだろ!」

「ギャ〜〜〜! て・てっちゃん? な・何すんの! やめてよっ! じ・自分で脱ぐよ!」

「hyde! さっき、風呂に湯入れてきたから! シャワー浴びてる間に湯、張るから! 
 その間に髪の毛ガシガシ洗ってやるから! 身体もガンガン洗ってやるから! 
 だから頼む! はよう風呂入ってくれぇ!」

「こんのラルクのボケリーダー! てめっ、ドサクサ紛れに何言ってんだよ!
 hydeと一緒に風呂入るのは俺に決まってんだろ!」
 
「鬱陶しい二人とも!! 服ぐらい一人で脱げるよ! 風呂も一人で入る!」
 


不貞腐れて煙草をものすごい勢いで吸いまくりながら、
ソファーで大の字になっているサクラと違い、tetsuは神経質なぐらい心配性である。
hydeが風呂に入っても、風呂の中で倒れでもしないかと
自分で入れと言っておきながら気が気でない。
脱衣所を陣取り、いちいち様子を伺う始末。
 
「寒い〜〜」
「さ・寒いんか、hyde。 シャワー目一杯出せや」
「あ〜、シャンプー、泡立ち悪いよ〜」
「3日間洗ってなかったからな。一回流してもう一度付け直して洗ってみ?」
「ほんまや〜、ちゃん泡立つわ〜!」
「リンスもすんやで」
「え〜、めんどいやん」
「アカンアカン、hydeの髪はただでさえ痛んでんのに、キシキシになんで」
「へ〜い」
「身体は洗ったんか? ちゃんと洗えよ。 背中洗えるか?」
「・・・・・・・・・てっちゃん、子供やないねんから」
 

一体誰が親ばかで、子煩悩だと言うんだ、 tetsu!
 

「そろそろバスタブに湯も充分張ったやろ? ちゃん入って、身体温っためや!」
「あ・熱いよ〜〜、てっちゃん」
「今度は熱いんか・・・・湯ぅに水足せや、hyde」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい? hyde?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「入んで! hyde!」
 

バスルームに入ったtetsuが見たのは、バスタブにつかりながら
その淵にデロリンとグタッっているhydeの姿だった。
 

「おわぁ! hyde、大丈夫か?!」
tetsuの奇声にサクラも駆けつけてくる。
 

「hyde! 今すぐ出してやるからっ!」
「待て待てぇ! お前は信用できひんっ! hydeは俺が出すし!」
「信用できないのはお前だろが! リーダーの権威かざしてhydeに無体なことしやがってっ!」
「俺が来なんだら、お前がhydeにもっと無体なことしてたんやろっ!」
 

どっちでもいいから早く出してここから・・・・・
hydeがそう思っていると、天下無敵の超ストレート金髪ポニテが、
いまだに喧喧諤諤と言い合いを続けている二人の間を抜けバスルームに滑り込み、
hydeをバスタブから引っ張り上げ、その身体をバスローブで包み、
さっさとリビングに連れて行ってしまった。

あまりの手際のよさにアホ面の二人も急いでリビングに走りこむ。
 
するとそこには、頭までちゃんとタオルで包んでもらったバスローブ姿のhydeが、
真っ赤な顔でポカリをストローで飲ませてもらいながらソファに座っていた。

そしてその横には、リビングに駆け込んできた二人を睨みつけるyukihiroがいた。
 

「全く、信じられないね! こんな熱出してる人を、あんな熱い風呂に入れるなんてね!
 風呂なんか3日くらい入ってなくったって死なないんだから! 
 身体拭くか、どうしてもってなら、人肌の熱さでさっとで充分! 
 頭まで洗わせるなんてね」
「そらみやがれっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・」 
 
「S.O.A.Pのリーダーさん」
「お?」
「風邪引いてる病人がいる部屋で煙草を吸いまくるなんて
 ちょっと思いやりに欠けてんじゃないの? ましてやhyde君はヴォーカルだよ! 
 これ以上喉に負担掛けてどーすんのさ!」
「ようゆうた、ゆっきー! もっとゆうたれ!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 

「お二人ともお疲れ様です。この後はyukihiroさんに任せてください。
 ・・・・・メグさんからの伝言です。さぁ! 帰った、帰った! hyde君の熱が上がる!」
 

どうやら3人が3人共、時間差でメグちゃんから電話をもらっているようである。
ツアー&ハロウィン前からこっち、hydeはギッシギシのスケジュールで、
実は家族サービスを怠っていたのだ。おまけに最後には風邪引きである。
(メグちゃんにはいい年してミニスカ穿いてはしゃぐからだと言われた)
 

嫌がらせや・・・・メグちゃんの嫌がらせや。
プリンス(←子供のこと、自分KINGだから)とも遊ばせてくれないのも嫌がらせや!
せやけど、サクラにてっちゃん、ゆっきー、もう一人いるやん。アイツはどんな役目なんやろ?
 
メグちゃんの采配が少し楽しみなhydeだ。
 

サクラとtetsuはyukihiroに玄関先に押しやられながら、
自分達が一人の女性の掌で転がされていたことに気が付き、
流石、あのhydeを獲得しただけのことはある、その神算はhydeを上回るんじゃないか、
これはこの先、自分も身の振り方を考えねばなどと思っている間に、
玄関外に放り出されてしまった。
 

「あっ! こらっ! ゆっきー! 何すんねん! 中に入れろや! 
 今日はガンダムの歴代MSGの名戦闘シーンのみ編集したDVD持ってきたんやからなっ!
 バナナ食べながら、俺の解説付きやで!」
「そんなチラチラした画面観てたら目回すよhyde君。DVDは返すよ。バナナはもらっとくから」
 
ドアチェーンをしっかりかけた数センチの隙間からこちらを見る無表情な目。
yukihiroはtetsuを見据えながら、隙間からDVDを寄越した。
 

「おいっ! ラルクのドラマー! ドアチェーンはねぇだろ、ドアチェーンはよっ! 
 てめぇ、hydeと二人っきりになって何するつもりなんだよっ!」
「病人への適切な介抱だよ。サクラ君以上でもサクラ君以下でもないよ」
「なんだその言い草っ! おら、開けやがれっ!」
 

事態が思わしくないほうに向かいそうになった時、第三の男は現れた。
 

「よ〜、マンション玄関前の危険物2個ってサクラとてっちゃんのことけ? 
メグちゃんも粋なこと言わはるようになったな〜」
「あ〜、ken君」
「やっ、ゆっき〜、後は任しといてくれ。
 メグちゃんから、今日はhydeのおごりでとことんやってええとお達しが来てるからな! 
 あぁ、差し入れ、ドリンクやらアイスやら喉越しええもん買うてきたし、ここ置いとくな。 
 さぁ、危険物たちよ、俺に静かに回収されたまえ!」
「そんなアホな扱いがあるか! ええ加減にしとき、kenちゃん」
「危険物なら家の中にも1個いるだろうが! あれも回収しろよ!」
 

大の男3人が人の家の玄関先で全く恥かしいやりとりである。
 

「あんな、2人ともよっく考えや。 メグちゃんの公認、hydeのおごりやで! 
 メグちゃんな、どこぞの店にも全部手配してあるそうやって。
 hyde行きつけの店でな、フリードリンク、フリーフード、 フリーネエチャンや! 
 さぁ!こんなとこにいてんと、俺等は夜光の危険物になろうやないか!
 ハハハハハ、ドンと来いや〜!」
 

阿呆! 俺がそんな店行きつけ&メグちゃん公認にするかっ! お前と一緒にすなっ!
 

hydeは、2本目のポカリをチューチュー吸いながら、
玄関先で繰り広げられるご近所迷惑この上ないこの程度の低い会話を、
情けない気持ちになりながら聞いていた。しかし、
 
 
 ・・・・・静かになった・・・・・・、2人とも納得したんか? あれで? 回収されたの?
あぁ〜〜〜、なんてイタい、なんちゅう3人ともイタい奴らなんや!
 
濡れたタオルを洗濯機に入れ、転がっているバナナをキッチンに置き直し、
差し入れされたものを冷蔵こにキチンと入れると、
「ふぅ〜」とひとつ溜息を吐いてyukihiroが言った。

「やっと静かになった。 大変だね〜hyde君も。 家からおかゆさん持ってきたから、
 ちょっとお腹に入れよ〜ね。 温め直すからね、台所借りるよ」


あぁ、癒される。 心の平穏ってこういうことをゆうんや。
こんな普通な対応がどーして我メンバーにはできないんだろう?
みんな絶対どっかおかしいよ。人間としての欠陥抱えてるよなぁ〜。

hydeが自分のことを棚に上げ、そんな失礼なことを考えている間にも、
yukihiroはおかゆを温め、持ってきたタッパーからおかゆを皿に移し替え、
尚かつ、熱いおかゆを冷ませるように取り皿まで用意して持ってきた。

 
「おおきにな、ゆっき〜。 ほんまにこういう時、ゆっき〜が一番頼りになるわ。
 サクラもてっちゃんもkenちゃんも最低や。
 人が病気で弱ってるとこつけ込んで面白がって、結局ゆっき〜に任せて、
 俺のことそう心配してるわけでもないやん・・・・・・・」
 
いや、一番つけ込んで面白がってるのはhyde君の奥さん。
hyde君、外じゃカリスマで信奉者も多くてKINGで姫扱いなのに、
家庭内じゃそうでもないんだね。ま、当然といえば当然なんだけど。
 

誰よりも冷静でビンゴな思考のyukihiroだが、それを口外しないのもyukihiroである。
 

熱からくる不快さと、最後にはあっさりと放ったらかしにされたことが少しショックで、
ブチブチと独りで文句を垂れるバスローブ姿のhyde。
頭はまだタオルでしっかり包まれている。
表情は少々不機嫌面だが、風呂上りと多少の熱でその頬はほんのりと上気し、
その上、大き目のバスローブは胸元が肌蹴、ほのかに色っぽい。
先ほどの3人が今のhydeを見れば常軌を逸すること間違いなし。

しかし、そこはメグちゃんがhydeへの最後のトドメにと選んだyukihiroである。
そんな普通な反応、彼女はお望みではない。
 
「ゆっき〜、忙しいのにごめんな。今度何かでこの埋め合わせするしな」
「いいよhyde君、そんなに気使わなくっても。 
 そんかわし、弱ってるバスローブ姿のhyde君、写真に撮らせてね。
 後でパソで僕好みに加工してみるから。 
 あと、おかゆさんは、僕が食べさせてあげる。 
 あ、これ、全部メグさんには了承済みだから」
 
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(さぶいぼ!!)」
 

元も含めメンバー全員イタイ奴等が結集したバンド、それがラルク・アン・シエルであった。
05.11.21

→ 最終兵器yukihiro
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