羽根に心地いい距離


練習の合間、音楽雑誌を読んでいる僕の隣に
hyde君が乱暴に座る。
 
少しソファが揺れて、僕は雑誌から目を上げざるを得ない。
そのまま視線をhyde君まで動かす。
 
彼は背もたれに身体を預けて、
両足は.....、テーブルに投げ出している。
 
珍しいね? そんなはっきりとした存在主張。
これはあれ。 構ってほしい猫と一緒。
 
「どうしたの、hyde君?」
 
ご希望通りにちょっとだけ構ってあげよう。
 
「う〜ん、さっきkenちゃんからコレ渡されて....」
 
ソファの上に置かれていた右手にはしっかり数枚の五線譜。
少し僕のほうに上げて見せてくれたけど、
そこには音符が殴り書きされたように踊っていた。
 
「できたてだね」
「そ、荒削りもええとこの」
 
目に浮かぶ。

「hydeさん、コレコレ」
なんて呼ばれて、

「フフ〜ン、フフ〜ン、フフフフン....分かった?」
「タラ〜ン、タラ〜ン、タラタン....?」
「タ、一個少ないで! な? ええやろ? どう?」
 
で、hyde君的にも何か降りてきそうなんだね?
その証拠に五線譜もったまま動きが止まってるよ?
瞬きも忘れてない?
 
僕は読みかけの雑誌に意識を戻す。
隣でhyde君が音符を詠んだり、独り言を言うのを聴きながら。
 
 
「ここはタラタラタタタ〜より、タラタラタッタタ〜よな?」
 
しばらくするとまた声を掛けられた。
 
「う〜ん、どうかな?」
「そのほうがしっくりする」
 
.....あ、歌詞がね
 
「ふ〜ん、チョコどう?」
「ありがと」
 
差し出された左手にひとかけら乗っける。
それは一向に口に運ばれない。
右手に五線譜。
左手にチョコだ。
 
「hyde君、溶けるよ」
「うーん」
 
左手が動くのを雑誌を読みながら目の端で確認する。
僕もちょっと興味のあるインタヴュー、今読んでるんだよね。
 
hyde君は僕に邪魔にならない程度にゆらゆら動いてる。
僕は僕で時々チョコ食いながら、
面白そうな記事でページをめくるのを止める。
 
 
 
 
「う〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!!!」
 
 

雑誌を一通り読んだところで、
思いっきりドスの利いた伸びをされて驚いた。
 
あ、まだいたのhyde君。
 
 
「音符見すぎて目ぇがチカチカしてきたわ。
 やっぱ、集中できひん。 自宅でやったほうがええわ」
「休んだら」
「うん」
 
投げ出していた両足をソファに乗せると、
クルンと横向きになって僕に背を向けた。
 
「休憩しよっと。 ..........なぁ、音符ってなぁ」
「うん何?」

「羽根生えてるみたいやね。特にkenちゃんの殴り書きのは」
「なるほどね」
 

その羽根を、天使の羽根にして空に羽ばたかせるのも、
邪悪な羽根にして棺桶に押し込むのも、
hyde君次第だよ。
 

なんてね。

飛び立つ準備でもし始めたように、
静かに動き始めた両肩に覗く『彼の羽根』に独りごちてみる。
 
 
 
 
「あ...tetsu君」
ブースから出てきたばかりのtetsu君を呼び止める。
 
「何、ゆっきー?」
「hyde君、寝ちゃったんだけど」
 
「お? あれ? おーい、hyde?」
「起きないよ。寝たばっかりだから。このままだと風邪引くね」
 
しゃーないなぁ、もう。 子供みたいなんやねんからなぁ。
 
って、tetsu君はブツブツ言いながらも、ちゃんとタオルケット持ってくるんだよね。
それで、身体とタオルの間に隙間が入らないように、
丁寧に掛けるんだよね(笑)
 
「何ニヤついてんや?」
「別に」
 
「ゆっきー横に座っとって気ぃついたんなら、ゆきが掛けたれよ。
 なんでわざわざ俺が掛けたらなあかんねん」
「僕? だって動くの面倒だったから」
 
「はぁ〜〜〜〜......(溜息)」
 
そ。
それと、僕はこの距離が丁度いいんだよ、tetsu君。

よろしければ感想を
06.10.19

→ 最終兵器yukihiro
→ 
top