SEVENTH HEAVEN 


「全く変な男だ。 アイツのことをどう思う、ken?」

櫻澤が座っていたソファには、HYDEに「ken」と呼ばれる男が座り、彼がとうとう口にできなかったワインを飲んでいた。

「さあ、ただの馬鹿者で、何が何やらさっぱりだ」

「NYの父から事前に連絡を受けていなければ俺に会う前にあの男、今頃蜂の巣になって硫酸プールの中で溶かされていただろうな」

「パパは一体どういうつもりなのだか」
「ふん、知り合いのご子息だかなんだか知らぬが、ファミリーのことを嗅ぎ回って疎まれている奴などを、なぜ俺がかくまってやらなくてはいけないんだ。
 知りすぎたジャーナリストなど殺される以外に何の価値もない。
 するなら自分ですればいいものを、まわりくどく情報を流してココに寄越すなんて」

「本当に面倒くさいな」
「全く。 適当にそこらに放かっておけ。 ただし、中の仕事などさせるな。
 外部との接触にも監視をつけておけ」

「分かっている。しかし、パパが寄越した理由は何なんだろう」

「そんなものただの気まぐれと暇つぶしと嫌がらせに決まっている!
 アイツはただの馬鹿者で、日本人の恥だ。それから、俺には自分がする以外の他人の評価など必要ない!」


父親にお荷物を背負わされた憤りをkenにぶつけた後、「あーあ」と伸びをするHYDEを見ながら、kenの頭の中にはいろいろな思考が飛び交っていた。

もう一度、櫻澤というあの男のことを調べてみよう。
彼がSEVENTH HEAVENについてどこまで知り、それをどうしようとしているのか気になる。
特に、まだ子供のようなHYDEがSEVENTH HEAVENのカーポ(頭領)であることなどが外部に知られるのは、あまりうまいことではない。だからこそ、今まで表だった場面には自分が出ていたのだし、いい隠れ蓑として数あるSEVENTH HEAVENの伝説を流したままにしてあるのだ。


「溜息をつきたいのはこちらのほうだ。
 
HYDE、早く私が安心できるような一人前の男になってくれ」
「ふん。 いつまでも子供扱いしているのはkenのほうだろ。
 俺はもうkenと初めて会った時のBambino(バンビーノ・赤ちゃん)じゃない」


「じゃ、眠れないからといって俺のベッドに潜り込んでくるようなことは二度としないんだな?」
「・・・・・・・・・・・・・・」


kenが後ろ手にドアを閉めると、部屋の中から扉に向かって投げつけられる何かが割れる音がした。

「おいおい、今のはバカラのアンベラトールじゃないのか?」

先ほどまで自分が口をつけていた、今では廃盤となっている金彩を施された優美なバカラのワイングラスを思い出す。


感情に任せて物事を無価値なものへと迷うことなく転換してしまう。


「そういうところがまだ子供だというんだ、馬鹿者が」


kenは、パパから預かるお荷物が一つから二つに増えたことを、神から与えられた大いなる試練だと思うことにした。



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さてその後、櫻澤は持ち前の交渉術でなんとか身体の一部を犬の餌にされることは免れた。
挙げ句に、あの手この手で『SEVENTH HEAVEN』に入会までしてしまった。


島民の間では組織の安寧の危機を畏れるHYDEが、それを守るために何かとんでもない秘密を握る日本人を、仕方なく組織に入れたのだとまことしやかに囁かれた。


そして、『SEVENTH HEAVENの女神』については、

その本当の姿は、まだまだ男も知らぬ花も恥じらう乙女なのだという新たな伝説も生まれた。

噂とはいえ、あまりに自分の実像からかけ離れ始めた『SEVENTH HEAVENの女神』像に、HYDEは少し眉間に皺を寄せ不機嫌な表情をするのだが、kenは、

「流れた噂はこちらで有効利用させてもらえばいいことだ」

と、一時も離さない煙草をくゆらせながらただ笑うだけであった。


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08.12.08


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