「おしまい」
HYDEはそう言うと、目の前で揺らめいている蝋燭の炎をふっと吹き消した。
後にはまだ火の点いた4本の蝋燭が残っていた。
「次は誰が話してくれんのー?」
頼りない蝋燭の灯りで照らし出された
メンバーたちの顔を見ながらHYDEは彼らに言った。
VAMPSの面々は今、LIVE発動前のコンディションづくりのため某所で合宿中である。
季節は夏。 バケーションの季節だ。 そして避暑地だ。
合宿といえども一から十まで仕事一辺倒では味気ない。
この合宿で、メンバー同士の懇親を図るのも目的のひとつだ。
酒盛り、花火、バーベキューにスイカわり。
朝は山道を散歩、気分転換にサイクリング。
わぁー、楽しいなぁ〜。
でもまだなんか足りない。
肝試し? これは流石に女がいないとつまんないね。
そうだ、夜の怪談話を忘れていた!
しかし、男だらけで全く女っ気のない合宿だ。
ただの怪談では面白くない。
ちょっと色気のある怪談話にしようぜとHYDEが提案し、口火を切った。
HYDEの話の間中、
アーリーは椅子に深く座り腕組をしたまま静かに聴き、
JU-kenはクッションを抱え込み顎に垂れる自らの鬚を引っ張っていた。
JINは、「こわぁ〜」と耳を塞ぐリアクションなどを見せ、
そしてK.A.Zは、始終穏やかな表情で、
身振り手振りを交えながら熱弁するHYDEを眺めていた。
HYDEの話が終わっても、皆のその状態は一向に変わることがない。
「なんだよー、次に話す奴おらんのぉ?」
不満げなHYDEにK.A.Zが落ち着いた口調で諭すように言った。
「うん、十分怖かったし色気もあったから、もういーんじゃない?」
「そお? 面白かった?」
「うん、HYDE、すっごくね」
K.A.Zの言葉に満足したのか、「汗かいたからシャワー浴びてくる」と、
ご満悦なHYDEは部屋から出て行った。
HYDEの気配が部屋から遠ざかるのを待って、アーリーが身じろいだ。
色気のある怪談話をしようと盛り上がったとはいえ、
あんなに身振り手振りで熱演してくれなくてもよかったんだけど・・・
まぁ、本人はみんなを楽しませようと一生懸命だったんだろう。
「いや、なんつーか参ったなぁ」
某俳優の物真似で、
自分のなんとなくぎこちない雰囲気を緩和しようとした。
「参ったよねー。 髪かぁ・・・・俺、髭は使ったことあんだけどー。
髪の毛は考えつかなかったなぁー」
それに応えるように、自分の鬚をつまみながらしみじみ語るJU-KEN。
「その髭はそーゆーことだったのか・・・・・JU-KEN、お前最低だな」
「俺って最低なわけで(笑)」
「っつーか、そういう参ったじゃないんだけど・・・・鈍感(ぼそり)」
「??? 俺って鈍感なわけでーーーー(爆)」
「・・・・(苦笑) まぁ、そんなホテルがあるなら一度泊まってみてもいいかな」
「えー、HYDE君の作り話っしょー、アレって」
アーリーとJYU-KEN、二人の会話を傍で聞きながら、
HYDEとそこそこ長い付き合いとなるK.A.ZとJINは同時に腹の中で呟いた。
HYDEと付き合うってことは、常に自分を試されているっていう、
また違った真の恐怖を味わうことでもあるんだよ。
終
08.09.05