「あ〜ぁ、こんな気ぃなんてなかったのになー」
hydeは球体の桃を多面体にして剥いている。
桃の皮を剥く(削ぐ)と、フォークを1本ぶっ刺した。
「うーん、ROCKって感じぃ」
確かに、半裸で乳首にピアスをしているhydeが、
フォークを刺した桃を突き出している姿はROCKっぽい。
「剥いてやったんだ、喰え」
なんでそんなに食べさせたいんだ?
「hyde、お前信長に冬桃を贈られた家康の話って知ってるか?」
「知るか」
「贈られた家康は食べたと思うか?」
「信長からなら喰ったんじゃねーの?」
フォークの刺さった桃が目の前でぐるぐるしている。
それを取り上げながら話を続ける。
「それが、喰わなかったんだ」
「なんで?」
「意外!」という感じでさっきまで潤んでいた瞳が丸くなった。
「冬に桃なんて明らかに季節はずれだろ?
そんな不自然なモン喰って身体にいいはずがない
と、家康は考えたんだ」
「ふーん」
hydeから受け取った多角形の桃をかじる。
時候のものよりやや味は薄いが美味い。
「じゃ、なんでお前は喰うの」
「家康が桃を食べなかったと聞いて信長はどう思ったと思う?」
「生意気。 せっかくやったのに、ありがたく喰いやがれ」
「(笑)だろ? “家康、天下を狙うか?”って思ったんだってよ」
「じゃ、サクラは狙わねーんだ、安心したよ」
「家康と信長は戦国時代の盟友なんだぞ」
「ただ桃が嫌いだっただけだったとか?」」
肩を小刻みに震わせながらhydeは笑った。
「本当はどうして持ってきたんだ、桃なんて」
笑っているhydeに不意打ちに真顔で迫ると、
hydeは笑うのを止めてそっぽを向いた。
「そんなん決まってんじゃん。 俺のため」
まぁ、なんとなく予想内のお答だったけど。
相変わらず意味は分からないなぁ。
「人が好きなもん喰ってんの見ると、俺、安心するの」
「つまり自分が安心したいから、桃を持ってきたってことか?」
「当たり前じゃん」
こういうことをされるのは苦手なので、
そういうことにしておこう。
だけど、
「じゃ、も一回喰わしてくれ」
07.11.21