ALONE EN LA VIDA


読む前に『Lion Heads』のオフィ
Lion blog:2007.11.14をお読みください

こちらはそのblogの勝手な続きとなっております


「それで本当は一体何を見たんだよ?」

YとTがシェアすることになった例の家を出てからずっと、
無口を通してただ歩くだけのHにSは切り出した。

「家主さんかな? あの人は」
「へー、どんなふうだった?」

時々こうやって得体の知れないものを見てしまったり、
その気配を感じたりするHの特殊な体質を昔から知っているSは、
先ほどのような出来事にも今では
さほど驚くようなことはない。

「女の人だったよ」
「美人か?」
「さぁ、そこまでは。 でも着物着ていたかな?」
「和服美人か!」

美人なら幽霊でもいいのかと呆れながら言うHに、
しばらく
空を見上げたSは、
やっぱり多少難有りでも生身の美人
だなと答えた。

「それはそうと、今晩のYとTの初夜は大丈夫なのかな?」
「初夜って・・・・そういう言い方やめなさい。 
あの二人はそんな関係じゃないんだからね」

「そぉかぁ〜? だってよ、じゃ二人で住むことねーじゃんか」
「いろいろ都合があるんだろ。 詮索するのはみっともないよ。
それに二人は大丈夫だよ。 あれは悪いモノじゃないから」

空高く昇っている月が、二人にくっきりとした影を落としている。
Hはずっと下を向き、その短い影を踏みしめながら歩いていた。
俯いているHの顔に掛かる髪が彼の表情を隠している上、
Hの声が
家を出てから沈んでいるのがSには気掛かりだった。

「じゃ、何がそんなに心配なんだ?」
「心配なんかじゃないよ」

俯きながら話すHの声は、夜中のしんと冷えて
僅かな振動も
伝えそうなほど冴えた空気の中でも聞こえ辛かった。

YとTへの初訪問にあんなすっきりとしない「おいとま」をしてきたことを
Sだって申し訳ないと思っている。
だけどHにすればそれは仕方のないことで、
そんなことを今更
とやかく言うつもりもないし、
できれば少しは明るい方向へと持って
行きたい今夜の出来事について、
Sなりに当たり障りなく努力を
しているというのに、
件のHは全くもってそれに乗ってこない。


乗ってこないどころか、益々肩を落とし、声を落とし、
今にも
消え入りそうな波長で自分の横を歩いている。

誰もいない真夜中の歩道に立ち止まり、
酔いのすっかり覚めた
口調でとうとうSはHを問いつめた。

「じゃ、何でお前はそんなに落ち込んでんだよっ」
「あの女の人の気持ちが俺にね、少し流れてきたんだ」

間髪入れずに言い返してきたHの台詞に
「そんなこったろーと思っていたけどさ」と、Sは思った。


これもHにはよくあることで、だけど一々それに同情していても
その感覚のないSにはどうにもしようがないことだ。

「あぁそれで、取り込まれる前に急いで家を出たわけか」
「うん。 YとTには悪かったと思う。
でもあの家は彼女が大好きだった人と住んでいた大切な家らしいんだ。
どんな人が来たのか心配で覗いていた
んだよ。
でもね、彼女はあの家で、好きだった人がどこかにいないかと
今でもまだあそこで、一人でずっと捜しているんだ」

「添い遂げられなかったのかなぁ」
「さぁね。 ただ・・・」

「ただ?」

「いくら好きな人がいても、最後は一人で死ぬんだなって。
彼女を見てそう思ったの。
それでね、俺はどうなんだろうって? 
その時は納まるべきところに納まれるのかな?
それとも彼女のように彷徨うのかな?って」

「そんな死んでからじゃないと分かんねーこと
今から心配したって仕方ねーだろぅ!」

まったくHは、こういう体質だからなのかも知れないが、
考えても仕方のないことをよくぐだぐだと考えつくものだとSは思う。
そして、相変わらず俯いて髪で表情を隠しているHを見おろし、
顔を上げしばらく空を見上げた。
続いて、肺に冷たい空気を吸い込むと、一気に言葉とともに吐き出した。


「Hが納まろうが彷徨おうが関係なく、俺が最後の時も
Hが最後の時も、俺はHのことだけ思っててやるから」


Hは大きな目を更に倍に広げてSを見上げた。

「思うことしかできないけどね」

ちょっとキザだったなーと後悔し、
相変わらずドングリ目のHの顔を
見ながらそう付け足した。

「側に美人な看護婦さんなんかがいても?」
「う・・・多分目を瞑っちまったらHしか思い出せないと思う」 

「俺は最後の時、Sのこと思い出しもしないかもよ」
「だったら納まる確立のほうが高いからいーんじゃない?」

「お前って自虐的な奴だよね」
「じゃないとHとは到底付き合えないからな」

Sの言葉が最後まで終わらないうちに、
歩道に落ちる影は
ひとつになると、
再びゆっくりと月明かりに照らされながら
歩み始めた。



というところまで夢でみたんですが、
SがHに言う台詞がクサすぎて、
さすがにここまではブログには書けませんでした。
by S

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07.11.15

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