晩海


火照りあがった身体に少し温めのシャワーは一気に眠気を誘う。
塩水に浸り、尚且つ汗をかいた身体はSEXの余韻に浸るのを
妨げるほどベタベタし、俺はたまらずバスルームに駆け込んだ。
 
なんだかかなり恥ずかしいことを言ってたよなぁと思いながら
寝室に戻ると、サクラはいなかった。
リビングの窓が全開だったのを思い出して、
ベランダに出て涼んでるんだろうとサクラを探しに行った。
 
あぁ、いたいた。
 
「サクラ・・」
 
と呼びかけ、俺はギョッとした。
適当にそこら辺のものを引っ掛けただけのサクラの身体は
ベランダから半分ほど外に乗り出していた。
 
「サクラッ! 何しとんのやっ!」
 
駆け寄ってサクラの腰にしがみつくと、
 
「わっーー! 何だよ!」
 
とサクラが身を翻し、乗り上がった手すりから下りた。
 
「な・何?って、こっちの台詞や! お前落ちそうだったやんか!
 何してたんやっ!」
「はぁ? そんなへましねーよ」
 
「じゃ、何してたんだよ」
「いやな、こんな早朝によ」
 
そろそろ辺りが白み始める頃だった。
 
「なんか子供が外に立ってて、こっち見てっからさ」
「えっ!?」
 
俺は慌ててベランダの外に顔を出し、マンションの下を覗き見た。
 
誰もいなかった。
 
「それで?」
サクラの方に向き直り聞きなおす。
 
「そんでよ、手振るんだ・・・こう」
 
俺はサクラの手の動きを見てゾッとした。
サクラは、「おいで、おいで」の手招きを俺にして見せた。
 
「サクラ〜〜〜〜」
俺はもう半泣き状態だったが、どうしても聞きたいことをサクラに聞いた。
 
「その子供って1人やった?」
 
 
 
 
 
 
 
 
「いいや、3人」
 
 
 
 
 
 
 
その日俺は仕事を休んだ。
ウザがられようが邪険に扱われようが、1日中サクラから離れられず、
怖くて風呂にも一人で入れなかった。
当然、それ相当の見返りをサクラには期待されて、
俺はその次の日も
休まざるを得なかった。
 
後日ネットで検索して分かったことだが、
俺たちが行ったあの海岸は、何十年か前に海水浴で楽しむ人たちを
突然の高波が押し寄せ、多くの人々がそれに巻き込まれたらしい。
中には夏休みを利用して家族で来ていた家族連れもあり、親の目の
前で流されそのまま行方不明になった子供が数名いたそうだ。
 
その後も何年かおきにその海岸では水難事故が起きる。
 
目の前で子供を流された親の気持ちが俺は分かる気がした。
あの時自分が手を離さなければ、手を繋いでいれば。
きっとそう思ったに違いない。
流された子供たちはまだあそこにいるのだろうか。
彼らが海に入る前にした最後の遊びは、
砂の城のトンネルで
親と手を繋ぎあうことだったかもしれない。
 
 
 
ある夏の盆過ぎの海の話だ。
実はこの話はこれで終わりじゃない。
まだおまけがある。
 
 
最近ライブをやってて時々気がつく。
俺に向けられるファンの子たちの手。
もちろん嬉しいよっ。
 
せやけどね、たまにね、
明らかに頭数より手のほうが多い時があんねんな。
皆にもゆうけど、それ気のせいやって言われる。
俺もそー思いたいよ。
 
やけど、その顔のない手の中にど〜見ても、明らかに
 
「おいで おいで」
 
してるちっさい手を見つけるときには、
ファンの子達には悪いんやけど、
 
ダイブはせんようにしてんねん。

時々見えます

06.07.223

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