サクラがhydeの部屋に着くと、その扉は開け放たれたままだった。
不用心といいたいところだが、今このホテルには自分たちしか宿泊客はいない。
部屋に入りhydeの姿を探そうと視線を漂わせると、
hydeはまだパジャマのままベッドで寝転んでいた。
「お前、いい加減にしろよなー」
サクラの気配に気付いてベッドから半身を持ち上げたhydeを見て、
サクラは梶田が彼を見て何を感じたのか瞬時に理解した。
「何を?」
「もういいから、早く着替えて飯食えよ」
「ふーん、いつになく真面目ですねぇやっちゃんは」
ベッドから降りたhydeは着替えるわけでもなく、ゆっくりと身体をくねらせ始めた。
「何やってんだよ?」
「なぁ、サクラ。 俺、結構間接やーらかいんやで」
「だから?」
「マラケシュのジャマ・エル・フナ広場で見たベリーダンス、俺きっと踊れると思う」
腰に手を当て、鼻歌を歌いながら身体をくねらすhydeは、
異様に上機嫌に見えた。
「お前そんなに今日の撮影嫌なの?」
サクラの溜息交じりのその言葉を聞くと、hydeは踊るのをやめ、
間近まで寄ると彼の顔を見上げながら答えた。
「嫌なのは暑いのと臭いのなの! 梶田さんには子供っぽい嫌がらせしました!
撮影がおしてんのは分かってます!」
言い終えるとhydeはサクラから身体を一歩引き、
撮影用の黒い衣装を纏っているサクラの脚元にそのきつい視線を落とした。
こうしていてもサクラはカスパのあの風景に溶け込んでいるとhydeは思った。
「暑いのも臭いのも俺、慣れへんにゃもん。 慣れたくもないけどぉ。
シャワー浴びたら行くからごめんなさいってみんなにゆっといて」
先ほどの剣幕とは打って変わってしおらしく、
横を向いて唇を少し尖らせながら詫びるhydeに、サクラはもう一度溜息をついた。
さっきまで薄い胸板を露わにしながら踊っていたと思えば、
今度は女性っぽい仕草で肌蹴たシャツを両手でかき寄せ身体を隠している。
計算づくなのか天然なのか、
自分は随分とhydeのこういう極端な部分に慣れはしたけれど、
hydeの生態を知らずにこれに直面したら、
先刻の梶田のようにさぞかし脳天を撃ち抜かれることだろう。