そんな彼の事情  1


俺はtetsu。
 
あの衝撃的報道から「新生ラルク」としての方向を今模索中、
な「ラルク」のリーダーである。
俺が推挙した新しいメンバーもいい形で定着しつつあり、まずまずの滑り出しだ。
しかし、今回のことで俺はリーダーとして、メンバーのヘルス面からメンタル面
までのケアが重要であるということに気がついた。

特にhydeには、さりげなく且つしっかりとした管理が必要ではないか?
ライブ終盤に体力が続かず、へたれるヴォーカルがどこにいるのだ!
そして今日も今日とて、ライブ開演の予定時刻であるというのに、
件の男は行方知れずである。
見当はついている。
俺はリーダーだ。
メンバーの習性など把握しきっている。
 

「やっぱりや」
予備の機材が壁に沿って並べられ、縦横に入り組んで置かれている狭苦しい空間に、
俺はhydeであろううずくまる金色を見つけた。
歌う前にhydeは、時々こうやってふいっと居なくなる。
一人静かに緊張と対峙してましたとかいうならまだ可愛げがあるが、
大体においてどこかで丸くなって寝こけていることのほうが多い。

「寝るんならソファーがあったやろ。 今日はこういう気分やったんか? 
 どうせまた猫みたいに丸こなって、服、埃だらけにしてんのやろなぁ・・・・あぁ」
 
「hyde」と、声を掛けようとして俺はその隣にある黒い影に気がついた。
髪も瞳も双黒で好んで着る服も黒という、同じ黒い衣服を身に着けてはいるものの、
金色と白というイメージのhydeとは対照的なその人物に、
俺は見覚えがあり過ぎるほどあった。
 
「サクラ・・、アイツ、何でこないなとこにいるんや!」
どうやらhydeにも同じことを言われているらしい。
 
「何でおるん?」
「hydeさん、また居眠りしてんじゃないかと思って」
「ふーん・・・で?」
「tetsuに怒られるよ。さっきすごい形相で探してた」
「・・・・・寝覚めの悪いこと言わないでよ・・・・」
「じゃ、俺からの清々しい目覚めのキスなんてどう?」
「ハハ、ベストやないけど、まだましかな」
「言うね」
 
あ〜、そういえばサクラはようこうやって寝こけたhydeを起こしてはったなぁ。
なんだかんだゆうて、アイツはhydeの扱い上手かったんや。
 
リーダーとして自分が取った判断が正しかったという確信はあるものの、
寛いで話す2人を見ながらなんだか分からない痛みを感じ、
俺はサクラに声を掛けることをやめた。

その間にも、くすくすと笑いながらhydeは、サクラに薄く色づいた唇を寄せる。
ほの暗い照明の下、金と黒と白がほとんどその色を現せずにいる中、
hydeの唇がサクラに重なる一瞬、その色が妙に艶やかに感じた。
 
ほ〜〜う、hyde君いつもそうやってサクラに目覚めさせてもらっていたのかね。
微笑ましいねぇ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
       
って、ちょっと待て!
今、アイツ等何した?(今も続行中やけど)
いや、アイツ等のことやからただの挨拶(する必要ないやろこの状況)、
おふざけ(って感じではなかったよな)、
それに、あ〜〜〜〜〜、ディープになっとる〜〜。

お・落ち着けやtetsuよ。
あ、そうや、これはあれや、またhydeの奴が俺に一杯食わせようしとるんや。
せや、そうに違いない。
はようそうやと言ってくれそこのお二人さん!
 
俺がパニクッてると、機材向こうのご様子も何だか怪しい雰囲気になってきた。
 


「ち・ちょっとサクラ! 冗談! やめいって!」
 


・・・・・・・・・・ヒ〜〜〜〜ッ! 
何でそないな態勢になってるんですか? 
何するつもりですかサクラさん?
 
hydeは右足をサクラの肩に担ぎ上げられ、両手は身体とともに壁に押し付けられていた。
 


「寝ぼけてるhydeさん見ると欲情しちゃうんだよね」
「いや、もう起きました! 完全に目覚めてます!」
「そう? じゃ、ここも目覚めさす?」
「〜〜〜〜〜、お前!離せったら、こういう時だけその体格差で
 無駄に事進めようとすんなよな!」
「こういう時にこそ利用しないでどうすんの」
「あっ、や、やめぃ、こら、サクラ!」
 


hydeさん、こういう時は「キャー」とか、
「やめてー、誰かー」とか、
「お巡りさーん」とかいう反応やないんですか? 
何だか手馴れてませんか?対応が。

あ〜〜〜、俺はリーダー失格や。2人ができてはったなんて。
メンバーの習性は把握しきってたんと違うかったんか? 
いや、今はライブのことを考えな。 
できあがってしまった二人なんやから、ここは人として
というよりリーダーとして止めに入るべきや!
・・・のに・・・あ〜〜、何でや〜〜、身体が動かへんねん〜〜〜。
 
・・・・・・・いや、もう始まってしまったからには終わるのを待つしか、
それにこれは覗きやないで、断じてちゃうで!
こんな二人の関係を外部に知られては大変なこっちゃ!
これは・・・そう! 人払いのための見張りや!



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