髪フェチサクラ
不愉快だ・・・不愉快だ・・・不愉快だ!
さっきから玄関のドアフォンがそう鳴りっぱなしだ。
実際に"不愉快”と鳴っているわけではないが、
鳴らしている人間の逆立った心理状態が手に取るように分かる。
鳴らしてる奴はある意味「天才」だな。
「何なんだよ一体!!!」
こんな早朝から(時計を見る、4時だ)の他人宅への訪問を、
全くの非常識だと微塵も考えないドア向こうの相手に、
「誰だ?」と訝しがることなく開けようとする自分に少し呆れる。
「いい加減ご近所さんに迷惑だろ!」
「そう思うんならはうう開けろや! 全く非常識やな」
お前、非常識の定義間違ってないか?と思いながらドアを開けると、
するりと入り込んできたhyde。
しなやかな俺の猫。
「寝込み襲うつもりならもっと気づかれないようにしろよ」
一連の行動を少し揶揄って言ってやる。
もちろんいつものように軽口の応酬を期待してのものだったが、hydeは
「ふんっ」
の一言であっさりそれを片付けると、
無言で俺の胸元を掴み、ズカズカと土足で上がり込んできた。
「ちょ、ま・待て! お前、靴!」
気付かれまくりの上に靴跡まで残すのかよ。
あぁ、先日ハウスクリーナーに来てもらったばっかりなのになぁ・・・・・
少々情けないことを考えているうちに、
さっきまで寝ていた寝室に連れ込まれる。
hydeは、部屋の部屋の入口で俺の胸元から手を離すと、
(俺の)ベッドに乱暴に腰掛けた。
少し首を傾け、下から睨み付けている。
両手を支えに身体を少し後ろに預けると、組んだ右足の切っ先を俺に向けた。
「脱がせや」
言われなくても今そうするつもりでしたよ。
別にカーペットの汚れがきになるからじゃないけどさ。
「どーしたんだよ? いつになく積極的で俺は大変嬉しいけどね」
「サクラが溜まってんやないかと思ってね」
「そーりゃ気の利くことで」
俺は溜まったままでいる程甲斐性なしでは断じてない。
しかし、この状況は利用させてもらうことにした。
いつもはソノ気にさせるまでが大変な上、
事に及んでからもhydeの理性を吹っ飛ばせるのに一苦労するんだ。
しかし、快楽で訳が分からなくなっているhydeは可愛い。
文句無く可愛い。
普段しない顔。
有り得ない台詞。
本人は気付いてないんだろう。
そればかりか、俺がそんな事を楽しみにしているなんて知れば、
「親父趣味や!」と罵った挙句に、
「金輪際お前とは寝えへんっ!」なんて言いかねない。
だが、そういう強気な態度を落としていくのもまた一興なんだよなー
さ〜て、今日はどんな風に追い詰めようか・・・・・
などと靴を脱がすのももどかしく、不埒な考えに耽っていると、
まぁ、顔に出ていたんだろうな。
「いやらしいこと考えてんなよ、この阿呆がっ!」
襟首を掴まれ、思いっきりベッドに引っ張り上げられた。
hydeはそのまま俺を押し倒すと、馬乗りのまま首筋に下を這わせ始める。
ソノ感覚にゾクリとくるが、この展開は些か不本意だ。
形成逆転とhydeの頭に手を掛けようとしたところで、急に頭を上げられた。
「触んなーー!!!」
「?? ごめん!」
物凄い剣幕に思わず謝ってしまったが、目の前で揺れる
柔らかそうな髪に触れることぐらいはいいだろうと手を伸ばすと、
今度は払われた。
「だから髪、触わんなっ!! 今日はサクラに絶対に髪の毛、
触らせてやらへんからなっ!!!」
ここに至って俺は、この不躾な早朝の訪問の理由を理解した。
そして、それを甘受すべきであるということも同時に。
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