タコが好き 1 


皿の上で奇怪な動きをする物体と、
向かいに座ってニヤついている男の顔を交互に見る。
 
「hydeにご馳走しようと思って〜〜」
 
「思って〜〜」やないやろ・・・。
食べるのはかまへんけど、この動きは何とかなんないの?。
何で足(手?)切られても動いてんの?
俺には『空からの物体X』にしか見えへんっての。
 
「あ〜〜〜〜、も〜〜〜〜、うわっ!」
 
び・び・びっくりしたびっくりしたびっくりした。
さっきからウニョウニョ同じ動きしかしないと思って顔近づけたら、
先っぽの方が「ピョンッ」って来たよ。
やだやだやだやだ、さむぼろ立ってきた。
思いっきりこいつから離れたいよ、俺。
泣きそ。
 
でもな、食わなあかんのやろ。
ここで半泣きで食うんと食わんのとではテレ朝特番の見出し、
ひいては視聴率が違うとゆうんやろ、てっちゃん!
お前のマネジメント、俺、時々エゲツナ思うで。
 
 
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「どう?」
 
う・動いてる。動いてるよ口ん中で。
さっきのウニョウニョの一部分が俺の口ん中で〜〜〜〜。
せや、動くからあかんのや。舌と上顎でお・押さえつけたる!
 
「動かさせないっ!」
 
頼む! はよいんでくれ!
 
 
 
「ハイッ! お疲れさん、hyde君。
 俺的に非常に満足な画が撮れましたよ、フフフ。」
「〜〜〜てっちゃん・・・、お前な・・・。
 あ、まだカメラ回ってますよね?」
 
「見とれ〜〜〜〜〜」
俺は携帯を取り出すと、復讐に燃える涙眼でtetsuを
睨みながら馴染みの番号を押した。
 
「あ、サクラ? 俺、hyde。」
 
何を始めるん気なんや?
なんて悠長な顔してる場合やないで。
 
 注:以下の文、hyde君、多分に脚色しております。
 
 
「聞いてや〜サクラ。 てっちゃんがな、ライブで疲れた切った俺に
 何食わせたと思う? 蛸やで、蛸。生の! 赤黒くて太っといのがな、
 皿の上でウネウネのたくり回ってんのやで。そんでな、それをな、
 俺に無理矢理口にせいゆうんや! え?どうしたのかって?
  しゃ〜ないやん、カメラ回ってるし・・。俺、頑張ったよ。
 こうなったらウニョウニョの中でも一番ぶっとくて赤黒い奴選んで
 口にしよう思うて(箸で)つまんだんや。そしたらな、
 手に振動が来るんやって、こう、ビクッビクッって。
 俺、これ口にすんのかってもう失神しそうやったわ」
 
「あ・ああああの、hyde君?」
うっせー。
 
「いっぺんに頬張るのも何や怖くてな、ちょっと先っちょの方舐めてみたんや。
 そしたらな、ピクンって跳ねるように動きよんのやで〜〜。
 も〜あかんって、目ぇ閉じてパクッって全部口に入れたらな、
 予想以上に大っきくてぶっとくて、息苦しくて涙滲んでくるし、
 おまけに口の中でビクビク動きながら吸盤が吸い付いてくるし・・・
 
 おい、サクラ? どうしたん? ちゃんと聞いてるか?
 
 でもな、少しずつ噛んでったらな、甘〜〜い(蛸の)体液が
 じわ〜〜〜って出てきてな。気がついたら俺、全部飲み込んでたわ。
 まっ、俺の(生蛸食い)初体験の報告や。途中でサクラ思い出してな、
 帰ったら一緒に蛸食うてみようかな〜って。
 そんじゃなっ!」
 
ブツッ!
フフンッ! ど〜や〜tetsu〜〜〜。
 
「あの〜tetsuさん、今の収録は・・・・・」
「〜〜〜〜当然カットです」
 
「でも、これ入れたら上層部の受けもバッチリ、
 枠も30くらい伸びること間違いなしに感じるんですけど・・・・・」

「言わんといてください。今、俺の中で道徳心と背徳心が
 壮絶に葛藤しているところですわ・・・」
 
 
testuがなけなしのモラルを半泣き状態で掲げていた頃、
少し離れた東京では、特定の人物に対してはモラルのモの字も
この際必要なしという判断を下した男がいた。
 
 
 「遠隔操作で無駄に煽るなよ〜、どうしてくれんだよこの状態。
 ・・・・・・・フフフ・・・・・・・・・・。
 帰ったら覚えとけよhydeぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 
 
勝ち誇った顔で揚々と現場を立ち去るhyde君。
帰国後に鬼畜顔の男と食べる蛸がどう扱われるのかなんて頭の隅っこにもない。

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