皿の上で奇怪な動きをする物体と
向かいに座ってニヤついている男の顔を交互に見る。
「hydeにご馳走だ。三河湾で捕れる足長ダコだぜ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
事務所から小脇に抱えられる勢いで連れてこられた都内某所の某一室。
女将とは懇意で事情をよく知っている彼女は、何かと融通を利かしてくれる。
しかし!
「板長に無理言って生かしてもらっていた。さっきさばいたばかりだ」
この男に融通など利かさなくてもいい!
「どういうつもりや?」
「だから、食え」
「いやや」
(絶対何か変なこと考えてる)
「お前、携帯で言ったよな。帰ったら俺とタコ食うって」
「あ・・・・・」
「それに、『何でもする』って」
「あ・・・・・」
「一緒に喰ってやるから食えよ」
「・・・・・・・・・」
そう言いながら俺の隣に座り直すサクラ。
「わさび醤油に、レモン風味のゴマ塩油・コチジャン風だぜ。美味そう。
見ろよ、この生きのいいこと。
タコってな、生命力強いんだ。
心配しなくてもしばらくこの状態だそうだ。
板長自慢のタレで、味覚、触覚、視覚全て充分ご堪能くださいだとよ」
何なんや? この有無を言わさぬ流れは・・・・
俺は、サクラが差し出す箸に挟まれたウネウネ君を、仕方なく頬張った。
見た目エグイのに、美味いんやな、これが。
「どうだ?」
「んん・・・・美味しいよ、吸盤もプッチプチで」
「俺にも喰わせろ」
「自分で食えば?」
「・・・・・・・・・・・・」
「分かったよ! 〜〜〜箸で掴めない」
「んじゃ、手掴み」
「絶対いやや!」
「・・・・・・・・・・・・」
「分かったよ〜!(何なんや〜?)」
いまいち、サクラの行動の趣旨が掴みきれないストレスに耐え切れず、
ヤケクソになった俺は、皿の上の物体を1本摘むと、サクラに差し出した。
「あ゛〜〜〜、はよ食えサクラ! い゛や゛〜〜〜〜」
「いただきます」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・サクラ、それ、俺の指なんやけど」
気が付くと、生タコ足1本丸呑みしたサクラが俺の指をしゃぶっていた。
手を引っ込めようにも、手首を強く捕まれて引き剥がすことができない。
サクラの長い舌が、俺の指と指の間を舐める。
「あっ」
思わず身体がビクついて、目を閉じてしまう。
そこ、感じるんだ。指の付け根、感じるんだ、サクラ。
「な・・、ち・ちょっとやらしいで、サクラ」
「感じるんだろ?」
色っぽい目のサクラに見据えられ、心臓が一瞬波打つ。
サクラは、俺の手の甲を返し、今度は掌を舐め始める。
「んんっ、ちょっと・・・サクラ」
あかん、さっきより感じる。
肩をすくめ、敏感に感じだしたサクラの舌の感触をやり過ごそうとしたとき、
手首に巻きつく冷たいものにハッとして顔を上げた。
「タ・タコ?!」
三河湾で捕れたという足長ダコが一本、俺の手首にへばりついている。
サクラは、俺の掌から舌を手首に這い上がらせると、
そのタコを食べ始めた。
吸盤に吸い付かれて、そこがまた引き剥がされて・・・・
何だかくすぐったい。
「一緒に喰ってやるって言ったろ」
「〜〜〜〜〜〜、へ・へ・へ」
「変態?」
少し涙目で頷く。
「あのな、人間は皆変態なんだぜ。
前頭葉でSEXするのは、地上の生物で人間だけなんだ」
また、そういう無駄な知識を・・・どこで仕入れるんや!
あかん、コイツがこういうふうに理論的な言い草をするときは、
絶対に引かへんときやっ!
そうこうしてる間に、押し倒される。
両手にサクラの指が絡みつき、指の付け根を、掌を爪で引掻く。
「あっ、あ、あ・・・サクラ」
なんでこんなことくらいで感じる?
なんだか目が開けられない。
10本の指にジワリと感覚を呼び覚まされるのが分かる。
いまや、前だけ肌蹴られたシャツ。
その中の皮膚に指が這いずり回る。
いつもの性急な愛撫とは違って、
ゆっくり・・・・
かえって触れられることに期待してしまう。
のに、サクラはなかなか触れようとしない。
ベルトも外され、ズボンも下着ごと下ろされる。
最後はサクラの足が俺の足に絡みつくようにして取り払う。
のに、やはり触れようとしない。
完全に楽しまれてることに腹が立つ。
「サクラ! お前!」
口を開いたら開いたで、そこに肉塊が侵入してくる。
「ん! タコの味がする!」
「嫌か?」
ならばとばかりに、首筋に落とされた唇。
痕を付けるのが目的なのかと思うほど、あちこちを強く吸われ、
痛い。
指が、期待していた通りの動きを始める。
「あ、あ、あ・・ちょっと・・サクラ、あ・あかん」