IT'S SAD


酷く言い争う。
自分でも信じられないくらい酷い言葉で。
原因なんてもう覚えていない。
 
本当に彼に対して怒っていたのか、
何かの八つ当たりだったのか、
もともと抱え込んでいた感情なのか、
そんなことも分からないくらい。
 
なのに、一度湧き上がった怒りは、
そうやすやすと納まることもなく、
投げた怒りに返ってくるそれの相乗効果で、
ますます酷くなる。
 
気持ちが高ぶって目の奥が熱くなってくる。
原因も分からないことに腹を立てるなんて、
こんな無益でエネルギー効率の悪いこと、
我ながらバカじゃないかと思う。
 
興奮しきった俺に辟易した彼が、
毛を逆立てた猫をあやすように近づこうとするけれど、
そんな見え透いた懐柔策に、
なぜだか怒りが沸点に到達する。
 
どうしようもなくなって、力ずくで壁に押さえ込まれ、
そうされたことも腹立たしくて叫ぶ。
「このMAD SAD(キチガイサド)野郎!」
 
自分の状況も顧みずに言えば売り言葉に買い言葉のセオリー。
「それが望みならそうしてやる!」
 
太い腕で喉元ごと身体を押しつけられ、
足元なんか爪先立ち状態で酸欠状態に陥って思い始める。
 
本当はこんな思いはしたくない、させたくない。
こんなバカな真似はしたくない、させたくない。
 
麻痺し始めた脳細胞に少しでも空気を送り込もうと、
死に際の鯉のように口を開閉する。
喉の奥から変な音がし始める。
あ〜、これは死ぬな。死ぬかも。
 
些細なことで相手も自分も破壊する。
そういう自虐をも含む感情は、
生まれる前から植え付けられているのかな?
だったら、原罪を犯してまで食べた実の効能は皆無だ。
 
もっと語り合って、見つめ合って、触れ合って、抱きしめ合って、
愛して愛されて、愛し合う。
 
そちらの方がずっと心地良いし、
えねるぎぃ・こう率だって・・いいに決まってる。
 
なのに・・そうすることがとってもむずしいのはな・ぜなんだろう?
おれって・・・ばか・だから? 
とっても・・・・・かなしい・・なぁ。
 
いよいよ酸素の行き渡らなくなった脳が、単純思考に切り替わる。
生命維持のためだけに活動エネルギーを消費し始める。
今、目を閉じたら、もう二度と開かないんじゃないんだろうか?
そんなことを思いながら・・ちょっと目を閉じてみる・・・・・
 

→ SAD DOLLYに続く