All I Want For


『クリスマスには奇跡が起こる』
 
って、どこのロマンチストが言い出したんや?
 
原宿の雑踏の中に佇み、
自分の周囲を行き交う幸せそうなカップルに
何度も目をやりながらhydeは溜息をついた。
 
しかし、去年までの自分は素直にその言葉に同意していたはずだ。
今、それに根暗くケチをつけているのは、
自分の今の状況に依るところが大きい。
 
今年のイヴ(昨日)は独りで過ごした。
この日を全くの独りで過ごしたのは生まれて初めてだろう。
仕事が軌道に乗りだした今、
遠く離れた実家に気ままに帰ることも
恋愛を楽しんでいる余裕も暇もない。
気が付いたらイヴで、「嘘でしょ〜?」と思っても
悲しいかな、それが現実だった。
 
そして現実は更に追い打ちを掛ける。
夜中近くに鳴り響いたコール音。
こんな日に、こんな時間にと警戒するよりも、
今日みたいな日を平穏無事に終わらせたくないという
潜在意識のほうが勝って受話器を取り上げ後悔した。
 
「こんな日に、こんな時間に自宅にいるとは驚きだぜっ!」
「余計なお世話やっ! お前こそ、こんな日にこんな時間に
 俺にしか電話よこす相手はいーひんのかっ!?」
 
ふんっ! アホタレ。 お互い様を棚に上げて何ぬかす!
 
知人に自分と同じ境遇の者がいることにレベルの低い喜びを
感じたhydeだったが、
 
「俺は明日が本番だから」
「え?」
「お前は、クリスマス・・・・誰かといるの?」
 
と、さらりと聞かれて咄嗟に言い返すことができず、
 
「黙ってるとこみると、君は明日の予定も白紙ですか?」
 
という、相手の「まさかそれはないだろう?」みたいな問いかけに、
やはり気の利いた切り返しができない程打ちのめされた。
 
「・・・マジで? ヤッバイぜhyde、それ♪」
「なんでそんなに嬉しそうなんや」
「いや、だったら明日、ちょっと買い物つき合ってくれよ」
「何買うの?」
 
買い物は大好きだ。 
このまま家に閉じこもってないで、クリスマスの雰囲気を
満喫するためだけに出掛けるのも悪くない。
飾り付けられた街並み。
綺麗で可愛いショーウィンドウ。
華やかで楽しげな赤と緑のコントラスト。
着飾った人々。
見てるだけだってきっと楽しいだろう。
あ、少しワクワクしてきたかも。
 
「何って、プレゼント」
 
がーん。そーだった。
こいつの本番は明日やった。
ウキウキ浮かれきったどーせ全身真っ黒で
街の配色に全く溶けきれないヤローの幸せに、
なんで自分がつき合わなあかんねんっ!?
 
「アホか」
「頼むわ。 要するに買い忘れ。
 時間もないのに洒落たプレゼント買う自信なんてねーからさ。
 hydeのセンス見込んで。つき合ってくれよ」

→