I ..... don't want a lot for Christmas ・・・・
(クリスマスにはたくさんいらない)
「さて、行こか」と歩き出したhydeは、
先ほどから「諸人こぞりて」や「サンタが街にやってきた」などの
お決まりのクリスマスソングを歌っていた聖歌隊の中の
一番体格のいい黒人女性が、
ハンドマイクでゴスペル・ロック調に歌い出し、
その鼓膜を響かせた声量の凄さに驚いて足を止めた。
There is just one thing I need (私が欲しいのはひとつだけ)
「これってさ」
「マライア・キャリーだな」
彼女が歌い出したのは、言わずと知れたマライアの
『All I Want For CHRISTMAS Is You』 (恋人たちのクリスマス)
94年に発表されたマライアのクリスマスヒットナンバーだ。
日英でシングルカットされ、
今ではすっかりクリスマス定番の歌である。
Make my wish come true・・・・・ (どうか私の願いを叶えて)
ALL I want for christmas・・・・・・
(私がクリスマスに欲しいのはあなただけ)
is・・・・・
you
忙しげに歩いていたカップルが皆足を止め、
それぞれがマイクを片手に、聴いている人々の間近まで寄り
そのあとに続いて歌い上げる3人の美しいハーモニーと、
身体を左右に揺らし、タンバリンを叩きながらコーラスをする聖歌隊が、
いかにもクリスマスの華やかな雰囲気を作り上げているようで、
知らずとhydeの身体も歌声に合わせて揺れてきた。
I just want you for my own (私はあなたを独り占めしたいだけ)
2コーラス目に入るとhydeたちの近くにも黒人女性がやって来た。
Make my wish come true
ALL I want for christmas is you
You baby
彼女はhydeに軽くウィンクをすると、
他の場所で歌っている2人を手招いた。
?
「なんや、今の?」
隣りに立っているサクラに聞くと、煙草の火を足でもみ消し、
にやにやしながら答えた。
「さあな」
! お前何か知ってるやろ?
サクラに喰ってかかろうとしたhydeは、自分たちが3人の黒人女性に
取り囲まれていることに気づいた。
歌は3コーラス目に入っている。
’Cause I just want you here tonight (だって今夜私が欲しいのは)
Holding on to me so tight (私をしっかり抱いてくれるあなただけ)
サクラはhydeの身体を抱き寄せると腰に手を回す。
「お前、なに歌に呑まれてんねん! アホ! 離せ!」
見上げたサクラの顔は悪戯っ子そうに笑っている。
なるべく場の雰囲気を壊さないようにと小声で抗議するhydeに、
「俺、お前のそーゆーとこ大好き」
しれっと言う肩は小刻みに震えていた。
「後で覚えとけよ」
Baby all I want for Christmas is 『 your kiss 』
You・・・・
「hyde」
「なんや?」
「このおばさん、俺らに『チュー』しろって言ってるぞ」
「!!! ジョーダンやろ!」
歌は最後のサビ前のCメロに入っている。
主旋律を歌っている黒人女性に再びウィンクをされた。
嘘? マジ?
小さく首を横に振ると、彼女は大きな目を更に見開き、
そしてまたウィンクをすると首を縦に小刻みに振る。
他の2人もhydeの顔を覗き込むように歌い出し、
それぞれがウィンク攻撃を仕掛け始める。
「シ・シラをきろう、サクラ」
「hyde、お前プロだろ?」
「それがどーしたんや」
「周りの様子見てみろよ」
なんのこっちゃ?
と思って辺りを見渡すと、そこにいるカップルの全てが
自分たちを注視していることに気がついた。
ひ〜〜〜、こ・これは・・・・
「な? オーディエンスの期待に応えるってのがプロってもんでしょ?」
「向こうは俺らのことなんて気づいてないよっ」
「女々しいね〜、hyちゃん。 腹くくれよ。
俺とキスすんのなんてこれが初めてってわけでもねーじゃん?」
More than you could ever know (こんな気持ちあなたは知るわけないわよね)
「シ・シチュエーションの問題やって、こんな人様が大勢・・わ」
Make my wish come true (お願い、私の願いを叶えて)
サクラはhydeの顔を隠していたサングラスを取り上げると
hydeに低く囁いた。
「ここで抵抗するとシラけるぞ」
Baby all I want for Christmas ・・・・・ is ・・・・・・・
・・・・ん・・・・ (このヤローーー)
You〜〜〜〜Yeaaaaaaaahhhhhh!!!!
MERRY CHRISTMAS!!!!