「で、兎に角誰か助けてと電話したら俺だったって訳?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「助けて〜〜〜」って、お前すごい悲鳴で切っちまうし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「何事かと思って来てみたら」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「お前馬鹿じゃないの? こんなの俺が助けになれるわけないだろうがっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
誰に電話をしたのかも分からないくらいパニクッていたhyde。
不意に鳴ったドアチャイムに応対してみたら、肩で息した青い顔のサクラがそこにいた。
「しかも、お前、ここに俺呼びつけるって・・・・ルール違反じゃない?」
hydeの後ろにはhydeを一応追っかけてきた息子が物凄い形相で泣いている。
何で俺がこんな親子の修羅場に直面しなくてはいけないんだと、サクラは思う。
当のhydeは、無意識に電話した相手がサクラだったという自分の不甲斐なさと、
この苦境に自分以外の人間がいてくれるという安堵感とで、
少々涙腺が弛みそうになっていた。
「ごめん・・・・、まさかサクラに電話してるとは思わへんかったし、
もうどうしたらいいのか分からへんかったし・・・・」
「お前さ、そんなことより・・・」
サクラは、玄関口から家の中に入ると、
いまだに衰えを知らず泣き続けている子供を抱き上げた。
子供は、いきなり今度は本当に知らないおっさんに抱き上げられたことで、
更にその音量と勢いを増す。
そしてサクラは、子供をhydeに手渡すと言った。
「お前追っかけてきてこんなに泣いてんだから、ちょっと抱き上げて、
抱きしめて、落ち着くまでずっとそうしていてやったら?」
ほれっと、手渡された息子はhydeの首筋にぎゅっとしがみつく。
心なしか泣き声も多少小さくなったように思う。
「あ・・・」
思い出した。自分だってそうだった。
寂しいときも悲しいときも、何かで激高しているときも、嬉しいときでさえも、
誰かに抱きしめてもらってその感情を分かち合えたらどんなにいいと思ったか。
いや、分かち合えなくても、抱きしめてもらうだけでどんなに心が安らいだか。
幸せになったか。
立派なスケッチブックよりも、何十色もある色鉛筆や絵の具よりも、
そうして自分を抱きしめて、自分の存在を相手の中に認めてもらうことのほうが、
どれだけ素敵なことに感じたか。
なのに自分は、そんな簡単な方法も忘れて、手を変え品を変え、
ただ相手の機嫌をとることだけしか頭になかった。
「あぁ、ごめんね。本当にごめんね」
hydeは子供を強く抱きしめると、その柔らかな頬に愛しそうに頬ずりをした。
自分がどれだけ的確な助言をしたのかなんてことも露知らず、
なんとなく丸く収まりそうな今の状況に胸をなでおろしたサクラ。
目の前に繰り広げられる宗教画のような父子の様子に目がチカチカする。
だが、ご機嫌を取り直した3歳児の恐ろしさなど2人の男が知るわけもない。