思いっきり感情をぶちまけていた3歳児は、当然腹が減ってるわ、
喉が乾いているわ、上と同時に下も水分流れているわ、
それが気持ち悪いわ、だけどそんなのお構いなしに、
せっかくいる大人(しかも2人、しかも男!)を有効利用したいわ、
兎に角全て同時にこなしたいわで大変な状態である。
hydeの受けた課題はレベルが高い。
食べさせながら飲ませ、あやしながらオムツを換える・・・・・・・。
しかし、たとえパンくずだらけになろうとも、飲んだジュースを服に
ぶっかけられようとも、オムツを替えている途中に何がついているのか
分からないベトつく両手で顔を撫でられようとも、ついでに髪の毛に
何かつけられようとも、今のhydeは聖人の域だ。
何をされても許せる(たぶん2日後は違う)、楽しい、嬉しい、単純。
こんなhydeは滅多に、というよりもう金輪際観れないだろう。
サクラは本当は心底観たくもない光景を、
それでも一応目に焼き付けておくことにした。
さあ! 身も心も満たされた3歳児が次に求めるものは遊楽だ!
2人に纏わりつく3歳児。
いつの間にやらサクラにも懐いている。
子供の精神は柔軟だ。
「〜〜〜〜公園にでも連れ出してやれよっ!」
「俺が子連れで行けれるわけないやろ!」
「くっそ〜、乗りかかった船だ! 屋内公園だ! そこのタオルケット持って来い!」
サクラは、お昼寝用に用意してあるタオルケットに目をつけると、
hydeに両端を持たせ、自分も反対側を持ち、タオルケットの上に
子供を載せ左右に振り始めた。
「おら〜〜〜〜、バイキングだ〜〜〜! だんだん揺れが大きくなるぞぉ〜〜!」
「ひ〜〜〜〜、お・落ちる! 落ちるよ、サクラッ!!」
いまやタオルケットの揺れは一回転しそうな勢いであるが、
遠心力で子供は落ちないどころかおおはしゃぎである。
「次ぃ! パパのシケた高い高いより、おじさんのほうがすごいぞっ!」
「わぁ〜〜〜、やめて!子供、目回すよ! 天井に頭ぶつける!」
『高い高いは子供の脳にあまりよくありません』という育児書をかじった
hydeの恐々高い高いとは打って変わって、サクラが足元から繰り出し、
その頂点に至って上層に放り投げる高い高いは、
たぶん大人に換算したら10メートルくらいの高低差だろう。
「hyde! そっちの手、持ってやれ。離すなよ! よしっ!ブランコだ〜〜〜!」
「ギャ〜〜〜〜、肩、肩抜けたらどうすんや〜〜」
他にも空中ブランコ(子供を放り投げてキャッチし合う、腕力のないhydeには酷)やら、
メリーゴーランド(一人が子供の両手を持って自転する、
離して歩かせると真っ直ぐ歩けないのが面白い。自転したhydeもフラフラだ)やら、
巨大滑り台(ベッドマットを斜めに立てかけて子供を滑らす、最後に拾い上げてやらないと
子供は床に直撃する。拾う側のhydeにしたら気が気でない)etc・・・・。
「サ・サクラ・・・もうだめ。 やめよう、休憩しよ」
肉体的にも精神的にも疲れきったhyde。
息子のほうも、今までの静かで大人しい室内遊びとは比べられないハードな
屋内競技と言ってもいいほどのお遊びにグッタリしている。
一気に眠気も来たようだ。
3人共、床に座り込む。
お遊びはおしまいだ。
「抱っこしてやれよ」
「うん」
サクラは、ジュースを飲ませながら子供の顔を覗き込むhydeを見る。
息子とその父親のhyde。
本当だったらその間に自分が入れるはずなどないhydeとの関係。
でも、こんな形でその一瞬でも関わることができて少し幸せかも
なとど思ってしまう自分が可笑しい。
そんなことを思っていると、hydeが自分を見ていることに気がついた。