kenが鍋に放り込む食材を皆が見つめる。
反省会より早く食べたい。
自然とビールに手が出る。
と、サクラは見かけぬものがそこに並べられているのに気が付いた。
「kenちゃん、ちょっと待って。その春雨みたいなのなんだよ?」
「え?春雨?・・・ってこれマロニーちゃんやけど?」
マロニーちゃん? 初めて見たばかりか初耳である。
「なんだそれ? それ鍋に入れるの? うどんは?」
「お前マロニーちゃん知らんのか? 鍋といえばマロニーちゃんやろー」
tetsuが驚いた声を出した。
マロニーちゃんを知らないことがそんなに凄い事なんだろうか?
「関東にはない食文化なんですかね?」
アルコールの回りつつあるhydeの妙に真面目なコメントが場にそぐわない。
「まったく貧相な食文化やなぁ、関東ってのは」
どうやらマロニーちゃんというのは知ってて当たり前の凄いものらしい。
「知らねーよっ! 俺は嫌だぞ、そんな得体の知れんもの喰うの。
それにどーみても春雨じゃねーかよっ!」
「これを鍋に入れるととろけてもちって食感になんの。意外に美味いよ、サクラ」
「これがっ?! 嘘だろkenちゃん? こんなもん入れんなら素直にうどん入れよーよ!」
疲れて腹が減ってアルコールが入ってるので、
こんなくだらないことでもなんだかやけに食い下がりたくなる。
「マロニーちゃんを食べたこともないくせにエロそーな(エラそーなやろ?とhydeの
ツッコミ有り)事をゆーな。全く関東はうどんのつゆ真っ黒なくせに。おまけに辛いしな。
俺はまろやかな関西出汁のほうが断然美味いし見栄えもええ思うな。 よって!
鍋もうどんよりマロニーちゃんやっ!!!!!」
くだらない食い下がりにはくだらない応酬である。
「どーゆー理由だよっ! 俺は鍋はうどんがいいの!! なー、kenちゃーん」
「ごめーんサクラ。俺も鍋はうどんよりマロニーちゃんのほうがええんやけど」
「何だよ! 俺は一人関東からこっちにきて頑張ってんだからな。
鍋にうどんくらい譲ってくれてもいーだろっ!!!」
「それとこれとは別や。(俺はお前に時々hyde譲ってやってんやから)これだけは
絶対に譲れへんなっ!」
「そーやなぁ。鍋にはマロニーちゃん・・・これ関西じゃ常識よ、サクラ。ジョーシキ」
「それが嫌ならはよぅこっちに慣れるこっちゃな。マックもマクドやで!
マックなんてしゃらくさいことこっちでゆーなや。それからうどん出汁に醤油入れたり
塩入れたり、おでんがお湯の中に浮かんでるとか、「ちくわぶ」とかゆー種が
入ってねーって大騒ぎなんかも他人がいるときにはせんとってな。
ついでにゆうとくけど、エスカレーターの追い越し線で立ちふさがるなや。
関東と関西じゃ正反対やねんからな。
サクラ君、はよう慣れんと恥ずかし〜からぁ〜〜〜」
いくら屁理屈捏ねのサクラでも、腹が減ってイラついている
ほど酔い加減の関西人には敵わない。
「くそっ。 あ〜、不味そうな鍋だなぁ〜」
「鍋ごときで全く五月蠅いんじゃ、ボケ。 さっ、hyde、どんどん入れてくでー♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ハイちゃん?」
「てっちゃん・・・今日はうどんでええやん?」
「え?」
「3人んときは鍋はずっとマロニーちゃんやったしさ。
それに、サクラはこっちに来て慣れへんことばっかなんやろ?
鍋にうどんくらいええやん。 うどん入れたってよ」
なぜかこの一声でtetsuは「しゃーないなー」と言いながら
うどんをどこかから持ち出し、鍋に入れる準備をし始めた。
なんと、さっきからお絵かきに夢中で3人のやりとりなんぞ蚊帳の外の出来事
のようだったhydeがいきなり判決を下したのである。
しかも、顔も上げずにお絵かきしながらだ。
鶴の一声ならぬhydeの一声だ。