世にもくだらないラル面反省会 1


「はい、かんぱーい!!」
 
ライブ終了後、tetsuの部屋でのメンバー反省会である。
腹の減ったメンバーは、ライブ終了後そのままtetsuの部屋に上がり込んだ。
今日は鍋にしようと言い出したのはkenだ。
帰り際にしっかり食材を買い込んでいた。
適当に身体を拭いて、風呂で汗を流すこともせず、
とりあえず空腹を満たしたかった。
真夏なら兎も角、男の子は汗くさいのよりまずは飯だ。
 
鍋の蓋から蒸気が上がる。
kenが鍋に放り込む食材を皆が見つめる。
反省会より早く食べたい。
自然とビールに手が出る。
と、サクラは見かけぬものがそこに並べられているのに気が付いた。
 
「kenちゃん、ちょっと待って。その春雨みたいなのなんだよ?」
「え?春雨?・・・ってこれマロニーちゃんやけど?」
 
マロニーちゃん? 初めて見たばかりか初耳である。
 
「なんだそれ? それ鍋に入れるの? うどんは?」
「お前マロニーちゃん知らんのか? 鍋といえばマロニーちゃんやろー」
 
tetsuが驚いた声を出した。
マロニーちゃんを知らないことがそんなに凄い事なんだろうか?
 
「関東にはない食文化なんですかね?」
 
アルコールの回りつつあるhydeの妙に真面目なコメントが場にそぐわない。
 
「まったく貧相な食文化やなぁ、関東ってのは」
 
どうやらマロニーちゃんというのは知ってて当たり前の凄いものらしい。
 
「知らねーよっ! 俺は嫌だぞ、そんな得体の知れんもの喰うの。
 それにどーみても春雨じゃねーかよっ!」
「これを鍋に入れるととろけてもちって食感になんの。意外に美味いよ、サクラ」
 
「これがっ?! 嘘だろkenちゃん? こんなもん入れんなら素直にうどん入れよーよ!」
疲れて腹が減ってアルコールが入ってるので、
こんなくだらないことでもなんだかやけに食い下がりたくなる。
 
「マロニーちゃんを食べたこともないくせにエロそーな(エラそーなやろ?とhydeの
 ツッコミ有り)事をゆーな。全く関東はうどんのつゆ真っ黒なくせに。おまけに辛いしな。
 俺はまろやかな関西出汁のほうが断然美味いし見栄えもええ思うな。  よって!
 鍋もうどんよりマロニーちゃんやっ!!!!!」
 
くだらない食い下がりにはくだらない応酬である。
 
「どーゆー理由だよっ! 俺は鍋はうどんがいいの!! なー、kenちゃーん」
「ごめーんサクラ。俺も鍋はうどんよりマロニーちゃんのほうがええんやけど」 
 
「何だよ! 俺は一人関東からこっちにきて頑張ってんだからな。
 鍋にうどんくらい譲ってくれてもいーだろっ!!!」
「それとこれとは別や。(俺はお前に時々hyde譲ってやってんやから)これだけは
 絶対に譲れへんなっ!」
 
「そーやなぁ。鍋にはマロニーちゃん・・・これ関西じゃ常識よ、サクラ。ジョーシキ」
「それが嫌ならはよぅこっちに慣れるこっちゃな。マックもマクドやで!
 マックなんてしゃらくさいことこっちでゆーなや。それからうどん出汁に醤油入れたり
 塩入れたり、おでんがお湯の中に浮かんでるとか、「ちくわぶ」とかゆー種が
 入ってねーって大騒ぎなんかも他人がいるときにはせんとってな。
 ついでにゆうとくけど、エスカレーターの追い越し線で立ちふさがるなや。
 関東と関西じゃ正反対やねんからな。
 サクラ君、はよう慣れんと恥ずかし〜からぁ〜〜〜」
 
いくら屁理屈捏ねのサクラでも、腹が減ってイラついている
ほど酔い加減の関西人には敵わない。
 
「くそっ。 あ〜、不味そうな鍋だなぁ〜」
「鍋ごときで全く五月蠅いんじゃ、ボケ。 さっ、hyde、どんどん入れてくでー♪」
 
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ハイちゃん?」
 
「てっちゃん・・・今日はうどんでええやん?」
「え?」
 
「3人んときは鍋はずっとマロニーちゃんやったしさ。
 それに、サクラはこっちに来て慣れへんことばっかなんやろ?
 鍋にうどんくらいええやん。 うどん入れたってよ」
 
なぜかこの一声でtetsuは「しゃーないなー」と言いながら
うどんをどこかから持ち出し、鍋に入れる準備をし始めた。
 
なんと、さっきからお絵かきに夢中で3人のやりとりなんぞ蚊帳の外の出来事
のようだったhydeがいきなり判決を下したのである。
しかも、顔も上げずにお絵かきしながらだ。
 
鶴の一声ならぬhydeの一声だ。
鍋の蓋から出る蒸気を眺めながらサクラは思った。
 
おかしい。こんなのは変だ。
うどんを食べたいのは俺のはずなのに。
なんでhydeの一声でマロニーちゃんがうどんに変わるんだ?
 
tetsuは何やら酔っぱらって熱弁を始めた。
kenは具を皆によそいながら
鍋に入れる材料を自分の手元に置き物色中である。
そしてhydeは、長い髪を前に垂らしたまま、
tetsuの言葉に曖昧な相づちを打ちつつお絵かきに熱中している。
 
こんな時いつも思う。
 
なんだろう? こいつらのこの一見バラバラでありながら
妙にバランスの取れた関係は?
 
tetsuの話が一区切りついた様子のところでお絵かき中のhydeに声を掛ける。
 
「おい」
「んー?」
 
やはり、こちらに見向きもせずお絵かきに夢中である。
 
「おい」
「いってぇなっ!」
 
ならばと鬱陶しい髪の毛を引っ張って注意を引く。
tetsuとkenが事の成り行きを見守っている。
 
「hyde、お前さ、次のライブん時はその下何か着ろよな」
「なんで?」
 
本当にいきなり「なんで?」である。
サクラの言葉にtetsuとkenの二人は「あー」という声を漏らした。
 
なんか面白くない。
なんだか面白くないのである。
なんかでっかい世界がちっこいコイツ中心に回りつつあるような、
自分だけ3人とは違うリズムを刻んでいるような、
そんな錯覚を覚える。
 
「さっきのであちこち引っ張られてビロンビロンじゃねーか、その服。
 そんなんでかがみ込んで歌ったら、最前列なんか中身丸見えだろ」
 
ただの言いがかりだ。
別にコイツの裸見てキャーキャー言ってる女がいようが
本当はどーでもいい。
 
「ええやん? 女やあるまいし、別に乳の一つや二つー」
「ヤローまで覗き込んでたじゃねーかよっ!」
 
ステージの中央でメンバーより後ろで演奏するサクラには、
会場の全体の様子がほぼ見える。
その中で、ヤローの上半身に鼻息荒くして覗き込むヤローの姿を
見つけたとき、まぁ、ある程度は分かっていたつもりだったのだが、
軽いショックというか、情けないというか、
そんな風に振り回されてるのが自分と同性というのが如何なものかというのか、
「それでいいのか日本男子?」みたいな思いがこみ上げてきたのである。
 
「上半身素っ裸で太鼓叩いてるサクラに言われたないなぁ〜」
 
俺はいいんだよ、俺は。
和太鼓だって上半身素っ裸だろが。
それに俺のは全面的に漢臭さが打ち出てる素っ裸なんだからよ。
 
・・・・・あー、そうか。

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