桜
その日は六本木にあるTV局で音楽番組の生出演だった。
最近のサクラは、レーベル同士のタイアップやら何やらで
あちこちに引っ張り出されたりと、いわゆる事務所の顔的
存在になっている。
そしてその番組に、ラルクとしてhydeも同日出演だということは、
サポートに入っている事務所からの説明を受けたすぐ後に知った。
別にだからどうだというわけでもなく、サクラは相も変わらず後輩の
プロデュースや自らのバンドのことで忙しくしており、
hydeもツアーの準備やらレコーディングなどで多忙であったため、
まぁ、会場で会えるだろうとお互い特に連絡もつけずに、流れの
ままにその日を迎えた。
そして当日。
リハの途中からkenの暇そうなコールがかかる。
スタジオからTV局に戻り、ラルクの控え室に顔を出した。
控え室にはkenしかいなかった。
みなそれぞれにすることがあるらしい。
kenもそれだから暇を持て余しサクラを呼んだのであろう。
見慣れたちっさいのがいないことが寂しいとか、
今抱えているバンドの方向性についてtetsuにちょっと
聞いてみたいことがあるとか、yukihiroさんはテリー・ボジオの
クリニックには行ってみたのかとか・・・・そういうことを話したいと
思ったわけでもないが、kenがそれぞれのメンバーの現況を想像も
入れながら説明をしてくれる。
「ふんふん。あー、そう。みんな忙しいのね。
かくゆう俺達も会話すんなんて久しぶりじゃん?
ところでEinなんか一体どーしちゃってるのよ、kenちゃん」
「サクラが知らへんもん僕が知ってるわけないでしょー」
あぁ、相変わらず声が高いねkenちゃん。
俺が今サポートしてる歌姫より高いかもよ。
歌がゲロ上手でさすがなんですけどね。
そんでココだけの話、おっぱいなんかもさすがなんだなー。
もうね、何処見てもアレだからさ、堂々と見れちゃったりするわけよ。
そんなふうにひとしきりお互いの近況やエロネタや
ちょっと真面目にギター談義なんかを、
控え室を煙草の煙で白く濁らせながら語る。
しばらく話し込み、そろそろ時間で自分のいるべきところに
戻ろうと控え室のドアを開けたところで、hydeとかち合った。
「なんやサクラ、こっちきとったんか」
「あ、俺のこと探してた?」
「阿呆か、そんな暇人とちゃうわ」
「へー、そう」
そうだな。
そんだけめかし込んでいたら時間も無くなるわな。
一瞬だけ見たhydeは真っ黒で、羽根羽根していてフワフワだった。
一瞬だけど、きっと彼に似合っていると思った。
hydeはすれ違いざま横目でチラリとサクラを見ると、
「後でな」
と、囁いた。
え?と振り向いた時にはドアは閉められていて、中から
「kenちゃん見てー」
「あ、カラスぅー?」
なんてやり取りが聞こえた。