吃逆
吃逆=しゃっくり 横隔膜のけいれん
ひっ・・・・・く
参った。
これから歌入れというところで出始めたしゃっくり。
他のことならともかく、こればっかりは我慢もしようがない。
出さずにおけるものではないのだし。
けれども、有能マネのおかげで予定のみっちり詰まっている
少しの隙間もないこの日々に、しゃっくりごときで歌入れを
諦める訳にもいかない。
この後には雑誌のインタヴューが2本待ち構えている。
息を止めたり、水を飲んだり(鼻を摘んで)
最大限の努力を惜しまず俺はさっきからやっている。
「hyde、今度は水やなくて熱いもんでも一気に飲んでみたら?
もしかしたら止まるかも」
teっちゃんが気の毒そうな顔をしてゆう。
teっちゃん。
それ真面目にゆうてんの?
俺、結構熱いの苦手なんよ。
知ってるでしょ?
それにさっきからteっちゃんが持ってくる水やら、ジュースやら、
なぜか身体にええからって青汁やら飲まされて、俺、お腹一杯なの。
しゃっくりよりも水腹で声出ぇへんようなるんちゃうかな?
しゃっくりは気にしなければどうということもないけれど、気にし
て、しかも止めようと必死になればなるほどに辛いもんやね。
あなどれんなぁ、しゃっくり。
「わぁっ!」
「・・・・・・・わぁ」
ありがとうkenちゃん。
手を替え品を替え、あらゆる角度から俺を驚かせようと頑張ってる。
でもね。
もうkenちゃんの中では俺のしゃっくりを止めることよりも、この限ら
れたスペースの中で、俺をどうやって驚かせようかということの
ほうが重要になっているんでしょ?
楽しい?
kenちゃんは何でも楽しめてええなぁ。
初めは付き合って驚いてあげてたんやけど、もうちょっと疲れた。
ほっといてくれる?
いきなし火の点いた煙草を目の前に突きつけられた時は、凄くびっくり
したんやけど。
驚いたからってしゃっくりが止まるもんでもないってこと、俺、よっく
分かったからね。
「お前らさー、ちょっとhydeに構い過ぎ。 ほかっとけよもう」
右手のスティックでteっちゃんを、左手のスティックでkenちゃんを指し
ながら、さっきまでクッション相手に叩いていたサクラが低い声で言った。
あ〜、ちょっとイラってる。
自分は平気で遅刻してくるくせに、人に待たされるのは嫌い。
「俺、ちょっと顔洗ってくる」
膠着状態で手持ち無沙汰。
やることがなくてその場から抜け出る。