確かに、耳をそばだてて聴いてみると、川の流れる音や虫の声に交じって
石を踏み分けてテントに近づいてくる足音が聞こえる。
「ほらね」
秀人があえぎなのか囁きなのか分らないような声で言った。
「しゅう、ほら、離れてよ。 どいて」
はたして足音の主は秀人が言ったように櫻澤なのだろうか?
だったら尚更・・・・
「い・や・だ」
「なに言って、しゅう、だめだったら」
「静かにしてないと知らないからね」
足音の主がテントの表に張ってあるタープを潜り、入口の前まで来た気配がした。
ネット状の入口に人影が立ち、
屈んでテントの中を覗きこむような仕草をするのが見える。
「秀人君?」
あぁ、やっぱり
秀人が言った通りの人物が様子を伺いにくるだろうということを、
秀人同様、秀も思っていた。
カチリッ
「ぅわっ!」
秀は傍に転がしておいた懐中電灯を、屈んだシルエットに向けた。
丸い電灯の中には、眩しそうに手で目に影を作っている櫻澤がいた。
「秀人君かな? 眩しいんだけど」
「櫻澤さん」
自分の下で今は婀娜っぽい声しか出せない秀人に成り代わり、
櫻澤の顔面から照明を少しずらしながら秀が返事をした。
秀人は、あられもない姿を闇夜の中とはいえ櫻澤の前に晒している羞恥と、
すっかり萎えてしまった自分とは反対に、
この状況を楽しんでいるかのように先ほどよりも猛っている秀に泣きそうだった。
しゅう・・・信じられない
始末の悪いことに、「秀、寝ちゃいました」などと
秀人の代わりに櫻澤と会話をしながら、秀人が声を押し殺さなければ
ならないようなことを続けていたのである。
「僕ももう寝ますから」
「秀君は、その・・大丈夫なのかな?」
あ・・・ぅ・・ぼくは、だ・大丈夫じゃない・・です
「大丈夫です。 大して気にしてないみたいですから
いろいろとご心配お掛けしてすみませんでした」」
「そうか。 昼間の事はちょっと可哀そうだったからね」
「ん・・・ぁっ」
「? どうかしたの?」
「あ、秀の寝言です。 夢でも見てるのかな(笑)」
「怖い夢じゅないといいね(笑)」
「ふふ、おやすみなさい櫻澤さん」
「おやすみ。 山の朝は意外と冷えるから気をつけて」
あぁぁぁ・・・は・・はやくい・・いってくださいぃ
カチリという音と共に、再びテントの中は暗闇に戻る。
櫻澤の足音がテントから遠ざかっていく。
「しゅうの・・・・ばか!」
櫻澤の足音が完全に遠のくのを待ち、熱い吐息を吐きながら
秀人が秀に抗議する。
声が少し泣いていた。
「安心してよ。 秀人のこんな姿、俺以外の奴になんか見せないから」
「そ・そういう意味じゃないよっ!」
その後、気疲れで完全にイキそびれた秀人は、秀に腹の上で吐精された挙句、
秀人もイカせてあげなくちゃねと、秀の巧みなオーラルと指淫で奉仕された。
もちろん、「声なんて上げたって構わないのに」という秀の言葉にだけは
断固として抗った秀人だ。
だがそのせいで秀には余計に無理を強いられ、
秀人は最後には堪らずにとうとう泣きだした。
泣いた秀人は、我を取り戻した秀に優しくなだめられながらやっと射精
させてもらえたのだった。
その後、暑さと眠気で少し朦朧としながら、秀は秀人に言った。
「秀人、俺さ、もうひとつしたいことがあるんだけど」
「・・・・・もう、いやだよ」
「んふ、違う。 あのさ、川で泳いでみたくない?」
「あ・・・それ、やってみたい」
「じゃ、少し寝てから泳ぎに行こうよ。
そんな頃にはみんなも寝てるだろうし、シャワーも兼ねてね」
そうして双子が再び起きた頃、やはり他の者たちは寝てしまったようで、
結局他のテントも狭くて中では寝ることができなかった櫻澤が、
焚き火の傍にシェラフで寝ている他は誰も外にはいなかった。
双子は念願の川遊びを、二人のはしゃぐ声で起こされた櫻澤に
「夜に暗くなってどこに深みがあるかも分らない川で遊ぶなんて自殺行為だぞっ」
と怒鳴られるまで存分に楽しんだ。