結局、事の顛末はこうだ。
秀は男を追い出すことを諦め(そんなことしたら絶対秀人が怒るから)
、ナナが昼食を準備するのに
「ひでちゃんと櫻澤さんのお話を邪魔しないようにしましょうね」
という理由で手伝わされた。
そして、フェットチーネに和えるワタリガニのトマトソースを煮込んでいる間に、
宿題もせずにおっさんと盆栽の話に夢中になっている秀人に無性に腹が立っ
てきて・・・・・
「秀人!夏休みも始まったばかりだってのに、盆栽の世話で貴重な17才の
夏を生白い肌のままで過ごすつもり?
「老人」と違って俺たちには、多少の太陽光の摂取は必要なんだよ」
そうやって噛みついたのだ。
太陽に当たっても赤くなるだけでなかなか焼けない白い肌は、
女顔であることを気にしている秀人にはコンプレックスの延長にある。
健康的に陽に焼けて、歯を立てても痕がつかないくらい変に丈夫だったり、
吸い付いたって紅が残らないような小麦色に変色した肌なんて面白くないとい
う秀には好みなのだが。
「17才に似合った夏休みの過ごし方って何かな?
あ、キャンプでもしてみる?」
秀人はにっこり笑いながら言ったのだが、
アレは絶対にカチンときているなとアウトドアライフが苦手な秀には判った。
小学校主催のキャンプ実習にも、中学校のそれにも、秀は「絶対に嫌だ」の一言で、
何にでも取り敢えず経験することを旨としている秀人にまで参加することを我慢
してもらっていた。
そしてそんなことを言う秀人を、
過去のキャンプ実習で秀人と一つテントの下で過ごす淡い期待を持っていた
級友5人が放っておくはずがない。
秀人の微笑みが秀に口を挟むことを許さないまま、
キャンプの話はトントン拍子に進んで本日に至ったのである。