ぼくの夏休み  灰×灰シリーズ 


秀人特製のカレーに、土鍋や飯ごうで炊いた白米は想像以上に美味しく、
おまけに級友達が川遊びをしていた下手で櫻澤が張った網には、
小さいながらも二十数匹の川魚がかかっており、
櫻澤がピチピチ跳ねる小魚を
そのまま小麦粉につけ油で揚げた天麩羅は、
キャンプの食事をコンビニ弁当で適当にまかなっていた級友達を感動させた。
 
用意された食事はあっと言う間になくなり、片づけが終わる頃には
辺りも
暗くなり始めた。
食事は作ることができないが焚火ならおこせると、
級友達がおこした火がその勢いを増す頃には辺りはすっかり暗くなり、
代わりに半月が空の高いところで光りはじめた。
 
しかし、ランタンが灯る簡易テーブルの上には、
まだ手つかずのチキンカレーが一人分残っている。
 
焚火を囲み、これはコンビニで購入してきたつまみものでビールを飲みながら、
なに気に意気投合している櫻澤と級友の兄たち。
級友たちは、昼間に撮った携帯やデジカメの画像などを観ては
何やら盛り上がっている。
 
秀人は少し離れたところに張ってあるテントをチラリと見、
櫻澤や級友たちの様子を伺うと、静かに椅子から立ち上がり櫻澤に言った。
 
「僕、ちょっと秀の様子を見てきます」
 
3本目の缶ビールを飲み干すと、櫻澤はテーブルの上のチキンカレーを持って
テントに向かう秀人に声を掛けた。
 
「ちゃんとカレーを食えって。 秀君はちょっと痩せすぎだよ」
「僕、秀とほとんど同じサイズです。
しばらく秀の機嫌は直りそうもありませんから、僕らのことは気にしないで
夜を楽しんでください」
 
櫻澤の言葉に軽く会釈をしながら秀人は返した。
 
 足元に気を配りながらカレー皿を抱えてテントに向かう秀人を見て、
小宮山兄は昼間、秀の身の上に起こった出来事を気の毒に思っていた。
 
「まぁ、可哀相だったけど、まさかなぁと思ったよね?」
 
櫻澤にそう問いかけられ、「えぇ、まぁそうですけど」と答える小宮山の横で、
堀は含み笑いをずっとしている。
 
双子の級友たちは相変わらず携帯やデジカメの画面を食い入るように見ていた。
 
「まさかあんな秀を見られるなんて思わなかったよな」
「うん、俺さ、秀人は可愛いと思ったことは何度もあるけど、
今日始めて 秀も可愛いじゃん なんて思っちゃったよ」
「そーだよなー! “きゃー”だもんな。 あの秀がきゃーってさぁ」
「・・・・女の子だよね」
「つか、虫は“嫌い”じゃなかったんだ(笑)」
「川から上がっててよかったな」
「うんうんうん」
「一緒にキャンプに来れてよかったな」
「「「「「うんうんうん」」」」」

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