SEVENTH HEAVEN 


 
シチリア。
太陽に口づけされ、海によって冷やされ、神々に祝福された島 。
イタリアンマフィア発祥の地。
イタリアの南端、そして地中海の真ん中に位置する。
成田からミラノ経由の飛行機に乗った櫻澤は、ある目的を持ちこの島のパレルモ空港に降り立った。

 
空港はシチリアの首都パレルモから西に約30qにある。イタリアの空港は地名の他にも名前がついている。 この空港には『ファルコーネ・ボルセッリーノ』の名前が付けられた。

92年、マフィアに殺された二人の判事の名前である。

空港からタクシーで30分程のパレルモ旧市街へ櫻澤が足を踏み入れたのは、昨日のことであった。

紀元前8世紀、フェニキア人に創建されたという古い歴史を持つこの島は、その後ヴィザンチンやイスラムなど幾度か支配者が変わったため、首都パレルモはアラブの影響が強い旧市街と、ヨーロッパ的な新市街というコントラストの強い景観が連なる。
また、アラブ・ノルマンディー、バロック、ネオ・クラシック様式と建造物を観ても分かるように、多くの異文化が混入されたエキゾチックな街となった。

 
「で、わざわざ遠隔地の日本からここに来たお前の目的は?」

 
 
人口約70万のパレルモはマフィアの本拠地でもある。そして、ローマ・ミラノ・トリノ・ナポリに次ぐ大都市だ。
パレルモの四分の三の人々が、マフィア、あるいはマフィアに関係していると言われている。
パレルモはイタリアで最も裕福な都市であり、マフィアが消滅すればイタリアで最も貧しい都市となると言われるほど、マフィアとの因縁が濃いのである。
 
そのパレルモに存在する数多あるシチリアンマフィアのひとつ。

 
『SEVENTH HEAVEN』

 
そこに単身乗り込んだ櫻澤の目の前には、きっちり黒服に身を纏った3人の男達に囲まれて、白い肌を惜しげもなく晒し、自分の膝に片肘をついた女が妖艶に微笑んでいた。

 
彼女の名は『HYDE』
周りにはべらす男達同様、滅多にその姿を人前に現すことはない。

 
あまりに見事にその消息が知れないため、本当は実在などせず、今や政府の強行な政策で壊滅状態に陥っているマフィアが、その威光と権力の翳しを残すため作り上げた伝説的な虚像なのではないか。
そんな噂が流れていた。

そして、その伝説に付け加えるなら。

その姿、女神と見まごうばかりな絶世の美女。

かのラッキー・ルチアーノが水辺で遊ぶニンフに懸想して生ませた末裔。

そんなお伽噺のような話まであった。

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