ま、こんなもんだろ。
柔らかいHYDEの唇を思う存分堪能し、唇を離しても、だが尚呆然としているHYDEが意外にも可愛く感じた。
「ごちそーさん」
少しからかうつもりで櫻澤がそう言った途端、誰が見ても明らかなほどにHYDEは真っ赤に顔を染めた。
うわっ! 何じゃ、このウブな反応。
嘘だろー! たまらんっ!
HYDEの細い身体から波打つ鼓動が櫻澤の身体に心地よく響いてくる。
圧し掛かられた苦しさで浅く呼吸が乱れた半開きの紅い唇は、櫻澤の感情が淫らに陥りそうになることを誘ってでもいるようだ。
自分が長年追いかけてきた獲物が、しかも極上のそれが、ようやく両手に捉えられ、今腕の中にいる。
「アンタ、俺がここに来た本当の目的知りたいって言ったよな?」
「・・・・・・あぁ」
「アンタに会いにだよ。 俺てっきりアンタのこと女だと思い込んでた。
でも、もう男でも女でもどっちでもいいや。
「ホレタ? ホレタってどういう意味だ?」
んじゃ、態度で示そう!
櫻澤が再びHYDEに唇を寄せようとしたとき、それまで真っ赤な顔をして、まるでファーストキスでも奪われたような反応をしていた彼の表情が、見る間に鬼のような形相に変化した。
「ken!!!」
「ひでー、騙したな。
アンタそれでもシチリアンマフィアのドンかよ?」
「黙れ、馬鹿者。 さっきまで俺は本当に丸腰だったんだ」
「ボディーガード待機させてたんなら同じことだろーがよっ!」
『SEVENTH HEAVEN』のボスが、誰ともキスしたこともないウブな男だなんて誰も思わな・・・・」
「ken!! ○▲×□☆☆●□×××ーーーーーーー!!!」
改めて聞くのは怖いが、聞かずにはいられない。
「・・・・・・アンタのボス、今何て言ったの?」
可愛い顔していてもマフィアのドンはドンだ。
「わーーー、冗談! 冗談! ジャパニーズジョークです!」
手を離せっ! 早くどけっ!
ken! コイツ早くなんとかしろっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・」
(ken:取りあえず危なくなさそうだし、面白そうなのでちょっと見ている)
「お願い! 許して! 愛してるからーーー!!」
HYDEにしばらくいい気になって抱きついていた後、櫻澤はkenに頭を殴られ簡単に気絶した。
今度は客間になぞ入れなくもいいというHYDEの命令で、ファミリーの若者達は櫻澤を地下の湿った薄暗い一室に放り込んだ。
それは、いわゆる拷問部屋と呼ばれるようなところであり、櫻澤はそこで、シチリアの「名誉ある男」に対して行った行為がどれほど蛮行であったかを、少々手荒な歓迎で身を以て思い知った。