クリスマスに街中に繰り出すなんて久しぶりだ。
着飾った街。
着飾った人々。
店先のサンタクロース。
華やかなクリスマスソング。
昼間とはまた違った様相の聖夜の街並みに、「クリスマスなんて大嫌い」と
言っていたチビhydeのご機嫌も直ったようである。
そして、目の前に現れたツリーは、あの時よりも大きな樅の木に成長していた。
『懐かしいな』
『なにが?』
小さく呟いたサクラおじちゃんの言葉を、チビhydeは聞き逃さなかった。
繋いだ手をぎゅっと握ってきたチビhydeを見下ろすと、寒さで鼻を赤くした彼が
サクラおじちゃんを見上げていた。
あの時のアイツも、寒くて鼻の頭が赤くなっていたな。
そんなことを思い出して、サクラおじちゃんは面白くなった。
『おじちゃんね、はいどのパパとこのツリーを見たことがあるんだよ』
しゃがんでチビhydeの目線に合わせながら言った。
『えー!、その時もこんなに大きかったの?』
『うん、大きかったよ。・・・・それに』
『それに?』
『とっても綺麗だったんだ』
『なにが?』
『もちろん・・・・クリスマスツリーが』
『ふーん、それっていつのこと?』
『もうずっと昔のこと』
『そんな昔のことを覚えているの?』
『覚えているよ。 忘れないよ』
『はいども忘れなーい。 さくらと見たクリスマスツリー』
『へぇー、嬉しいなぁ』
『うん、それからパパのことはやっぱり大好きー』
『パパのことが好きなはいどのこと、おじちゃんも好きだよ』
『はいどもさくらのこと大好きー』
きっとアイツは、一緒にこのツリーを見たことなんかすっかり忘れているんだろう。
そんなことを思いながら、ツリーの下でオーナメントに手を伸ばすチビhydeを見る。
そして、「そろそろ帰ろうね」と言いかけたサクラおじちゃんの目の前を、
白い片鱗がふわふわと舞い降りた。
「わー、雪だーー!」
チビhydeが上げた歓声で、それが雪だと気がついた。
この時期に雪だなんて何年振りなんだろうか?
粉雪だがどんどんと勢いが増し、この分だとマンションに帰り着くまでには
うっすらと降り積もることだろう。
雪だー! 雪だー! もっと降ってー! つもってー!
はしゃぎ回るチビhydeに、やっぱりアイツの子供だなと思わず笑みが浮かんだ。