2008年版真夏のホラー


蒸し暑い日だった。
その日、思わぬアクシデントで帰宅ができず、渋々選んだホテル。
空調設備が整っているはずのその部屋は、
まるで窓が開け放たれたまま外気が流れ込んだような
湿って生暖かい空気が充満していた。
 
うわぁ〜・・・・・
あとの文句が続かない。
どっぷりと体は疲れている。
温まった空気は同時に、
その部屋に染みついたわずかな匂いを立ち昇らせていた。
 
安いホテルでもないくせに居心地が悪い。
携帯の検索機能で安易に空き室のあるホテルを選んだ
我がマネージャーに怒りを覚えた。
が、隣の部屋にいるその男にわざわざ文句を垂れに行く気力も体力も、
今の自分には全く残っていない。
 
とりあえずこの身体の汗臭さを洗い流そう。
そう思い、部屋に入るなりベッドに投げた身体を起き上がらせた。
その拍子に化粧台の鏡に映った自分の姿が、
部屋に突如として現れた真っ黒な影に見えてぎょっとした。