2008年版真夏のホラー


ぱしゃりと浴室の壁にへばりついた髪の毛が、
「ざーーーー」という轟音と共に壁を伝って落ちていく。
 
いやだ怖い。
 
 
 
 
目が覚めた。
いつの間に消したのか、部屋の照明は落ちていた。
暗闇の中で点けっ放しだったテレビが白い画面と濁音を流している。
テレビを消そう。
起き上がろうとしたのにできない。
羽織っただけのバスローブは肌蹴て、
あられもない状態で両手両足を広げたまま、
ベッドの上で身体を動かすことができないでいた。
 
しばらくして手足に何かが絡みついているのに気がついた。
この感覚には覚えがある。
ついさっき感じたものだ。
なんだっけ、なんだったっけ、あぁ、なんだ。
頭の中ではその言葉しか浮かんでこない。
 
ぱしゃり
浴室のシャワーコックから水の落ちる音が響いた。
 
あぁ、そうだ! これはあれだ! 
でもそんなことのあるはずがない。
でも手足は動かない。
夢を見てるのか? それとも寝ぼけているのか?
きっとそうだ。 意識は戻って身体の感覚だけ戻っていない。
俗に言う金縛りというやつだ。
 
さっきとは違って、短い間にたくさんのことが頭に浮かんだ。
落ち着け落ち着けと呪文のように心の中で呟いてみた。
しかし、僅かに首が動くようになっても、
手足に感じる感覚が消え去ることはなかった。
動く首で自分の手足を見てみた。
何もない。
だが、何かで縛りつけられているような感覚は・・・・・
確かにそこにある。
 
そして、それは徐々に手首から、また足首から、
身体の中心にむかって這い上がってきた。
 
手で撫でられるよりは頼りなく、
けれども柔らかさが束になったような感触は、肌に相当響いた。
肩や首を撫で回っている刺激に、
くすぐったいような、気持ちがいいような。
どう反応していいのか分からないもので戸惑った。