どうしてこんなことになったのか、サクラには皆目見当
がつかなかった。
確か弁当を持ってきてやっただけだったはずだ。
それが今、目の前のコイツは目隠されて両手を後ろ手
に括られ泣いている。
しかも、それは手錠だ。
いや、訂正。
アイマスクは最初からしていたんだった。
手錠も片手にしか掛けられていなかった。
音入れと歌入れの同時進行のアルバム制作の渦中、
hydeはまだ作詞していた。
歌詞が出来上がらないと歌入れもできない少々イラつ
いているhydeに、
「お前ってさ、家でちゃんと仕事してんの?」
そう言ったサクラはどうやら地雷を踏んだらしい。
その後スタジオの隅っこで作詞を始めたhydeだが、当
然そんな雑多な雰囲気の場で作詞などできるハズが
ない。
時々キレられ、そのことでtetsuがキレた。
結果、hydeはひとつ上の階の空いている部屋に適当に
押し込まれた。
が、hydeは皆とつかず離れずの距離で作詞ができるそ
の環境が気に入ってたようで、それからは平穏無事に
アルバム制作は続いていた。
「疲れたな〜、ちょっと休憩入れよかぁ」
正午間際に集まって作業を始めた面々は、世間様が
昼飯を取る時間をとうに過ぎた頃に腹が減り始めた。
腹が減れば疲れも増す。
当然、効率も悪くなる。
「弁当来たみたいやし。 あ、頼まへんかった奴は適当
にしてや。 ほな、1時間でエエかな?」
tetsuに割り振られた休憩時間を有意義に過ごすために、
それぞれが思いの場所へと散っていく。
弁当を頼まなかったサクラは、気分転換も兼ねてちょっと
外に食べに行くつもりでいた。
「サクラ」
上着を引っかけたところでtetsuに呼び止められる。
「なに、teっちゃん」
「コレ、hydeの飯。 持ってったって」
tetsuは、左手でサクラに弁当を差し出し、右手の人差し
指で矢印を作り上に向けた。
「teっちゃんが行けよ」
「頼むわ」
あぁ、逆ギレしたこと気にしてるわけね。
別に平気なのに。teっちゃんが気にするほど、アイツは
気にしちゃいねぇのに。
「仕方ねーなー。 じゃ俺、休憩+30分でお願いね」
弁当を持っていくことなどさほど苦でもないのだが、一
応それなりの対価は求めておく。
「悪いな。 ついでにどんな様子か見てきてや」
「はいはい」
全く何を恐がっているんだかと、弁当を下げ階段を昇り、
件の人物の今は仕事部屋をノックする。
返事はない。
鍵がかかっていたらココに置いとこう。
ノブを回して扉が開いたのをサクラは面倒くさく思った。
今から思えばそれを理由にさっさと弁当を廊下に置いて、
飯を食いに行ってしまえばよかったのかもしれない。