LOVE ADDICT


「自分が思っている以外の愛し方がこの世に存在するって
お前知ってた?」
 
誰かに愛してもらうために、常に誰かを愛しているhydeが言った。
 
 
 
 
久し振りに二人で呑んだ。
プロモーションが始まればそんな機会もなくなる。
きっちり埋まっているスケジュールの合間に、
一方的なhydeからの誘いだった。
とはいえ、そういう時のhydeはいくら呑んでも酔わない。
お互いの近況など話していても、どこか上の空である。
 
指で挟んで口に持っていったままの煙草の煙が、
hydeの肺に吸い込まれることもなく漂っている。
大きなガラス玉のような彼の目も、
眼下の磨き上げられたグラスの縁に留まったまま、瞬きもしない。
 
 
誘った相手と酒を呑む以上に気にかかることがあるようで、
俺はどうして呼び出されたのかとサクラは思う。
 
が、自分にそういう態度が通用するとhydeが思っていることを、
サクラが悪い気がしていないということも、
この状況が二人の間で流れ続けている要因でもある。
 
 
 
 
 
「お前のバンド、まだドラムが空いてんだって?」
 
 
 
 
ドラムス募集の情報が公開されていると聞いて、
どこまでインディーズ体制を貫くのかと、可笑しくなった。
場つなぎで軽く聞いたつもりだった。
 
 
「あぁ?」
 
 
聞かれたhydeはそれから2、3秒後に眉間のシワと一緒に振り向いた。
そんなに気に障るようなことだったのかと思うくらいな声だった。
 
 
「どんなドラマーを選ぶのか、一応気になるところなんでね」
「もう目星はつけてあるよ」
「へぇ〜、俺も応募してみよっかなー?」
 
会ったら一度からかってやろうと思っていた。
 
「はぁ?」
今度はすぐに、下から睨み付けながら反応してきた。
 
それから無駄に煙を立ち昇らせていた煙草を揉み消し、
hydeは新しい一本を口に運ぶと、それに火をつけ一息深く吸い込んだ。
そして、吸い込んだ煙を肺に行き渡らせると、ゆっくりと吐き出した。
 
 
このわずかな間にhydeの脳はフル回転をする。
きっと一瞬だけ、サクラのことで頭の中がいっぱいになっているはずだ。
一瞬のことだけれど、今まで受けていた無下な扱いを、
それで帳消しにしてやろうなんてサクラは思っている。
 
 
hydeの吐き出した煙が渦を巻きながら辺りに溶けはじめ、
彼の指にある煙草から再び紫煙が一筋の線となって昇りはじめると、
彼は、考える前から分かり切っている答えを口にする。
 
 
「やめてよね。 そんなダサいことすんの」
「やっぱダサいかな?」
「うん、たぶん」