もちろん、店としてはそういう目的を内包していないわけでもなかったが、
殆どのお客は娯楽としてショー化された自分たちを楽しむ目的で来店していた。
そして、hydeや彼を連れてきた連れもそれらの客となんら変わりはなかった。
しかし、興味津々な連れに半ば強制的に連れられてきた感のあるhydeは、
絹子さんの目からすると、「そう疑われても仕方がない気の毒なノンケ」であった。
聞けばhydeはバンドのヴォーカル、連れはそのスタッフだと言った。
大はしゃぎで店の子に抱きついたり、下品な会話をしているスタッフの横で、
「可愛い」だの「女の子みたい」だのと店の子たちに騒がれているhydeは、
笑ってはいるが明らかに迷惑そうで、嫌気がさしているのが分かった。
そういう客を楽しませることは絹子さんにとって非常にやり甲斐のあることだ。
「ほらほらアナタタチッ。 この子怯えてるんじゃないのぉ〜、あっちにおいき」
「あん、ママずるぅ〜い」
シッシと店の子たちを追い払うと、絹子さんはhydeの横に腰を降ろした。
「可愛いって言われるの、嫌なのね」
「仕方ないよ。 俺、結構ほんとに可愛いから」
hydeは店内の「女の子」たちをざっと見渡すとそう言った。
真顔でそんなふうに言うhydeが、その後頼りなげに溜息をついたので、
絹子さんは彼のことを少し気に入ったのだった。