真実、幻想。


酒を呑みながらhydeは静かだった。
絹子さんの話に、「うん」とか「へぇーそう」とか「ふーん」とか、
その程度の言葉だけを返してきた。
しかし、それでつまらなそうにしているわけでもなく、
反対にばか騒ぎをしているスタッフたちを楽しそうに観ていた。
どうやら自分に火の粉がかからなければ、
この場にいることは一向にかまわないらしい。
 
そんなhydeが「ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」と、いきなり絹子さんに話しかけた。
もちろん「いや」と言えるわけがない。
 
「やらしーこと聞かないでよ。 私オクテなんだからー」
 
どーせ、「その胸ほんものなの?」程度のことでしょと、
絹子さんは、チラリと彼女ご自慢の胸を見たhydeの言葉を待った。
 
「ねぇ、きぬこさんはどーひて女のひろになったったの?」
 
絹子さんにとってはやっぱりおっぱい程度の質問だったのだが、
あらあらこの子はちょっと呂律が回ってなくって、
なによ可愛いじゃない。
と、思った。
 
それからhydeは、絹子さんの横でドン・ペリの入ったグラスをぐいぐい空け始めた。
グラスを明けるたびにhydeは絹子さんに質問をした。
 
「おとこのひとが好きだからなの?」
「好きな人がおとこのひとらったの?」
「おとこのひとを好きになるってどういうこと?」
 
「いやねぇ、はいどちゃん。 あたしおんななのよ」
 
正直、可愛らしく酔いに任せた姿を見せながらこんな質問をしてくるhydeが、
絹子さんには多少腹立たしかった。
 
「あたしはおんななの」
 
もう一度そう言ってやると、hydeははっとして、
 
「ごめんなさい」
 
と、小さな声で謝った。 絹子さんの前にhydeのつむじが現れた。
それで絹子さんはまた少し、hydeのことが気に入った。
 
「ねぇはいどちゃん、あたしはね、女なんだけど男も抱けるのよ
 
謝った後、頭を上げたhydeの顔をそう言いながら覗き込むと、
hydeの目は絹子さんの目を見たり、逸らしたり、また見たりし、
そして驚くほどたくさんの瞬きを繰り返した。
 



「よかったら教えてあげるわよ。 ほんとも誤魔化しも」
 
絹子さんはそういうと、部屋の住所と電話番号と、
それから時間をサラサラとコースターに書き、hydeに手渡した。
hydeは受け取ったそれをしばらくじっと見つめ、無言でポケットにねじ込むと、
一緒に来店した連れの男に何かを耳打ちし、静かに店を出ていった。

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