晩海


「ほら、hyde。 着いたぞ、起きろ」
 
身体を優しく揺すられて、寝ぼけ眼でサクラを見た。
デ・ジャ・ヴュ。  今までのは全部夢?
いや、違う。 俺の身体はしっかり濡れている。
 
「サクラ?」
「何だよ」
 
手を見る。
温かいサクラの手と繋がれたままだった。
 
「サクラッ!」
 
狭い車中でサクラに抱きついた。
 
「何なんだよお前は! あーもー!」
 
サクラは運転席から自分と俺を引っ張り出し、
腕にしがみついて離れないタオルケットでグルグル巻きの俺に悪態をつきながら、
それでもどこか上機嫌で自分
の部屋へと向かう。
 
誰も居ないマンションの廊下。
海を照らしていたのと同じ月の光が、コンクリートの壁に
くっきりとした陰を落としながら廊下に差す。
 
「グシュッ グシュッ」
 
俺の靴音が眠り込んでいるマンション内に響き渡る。
 
 
 
「h・hyde?」
 
サクラが玄関の戸を閉めるのを待って、
俺は玄関先に
タオルケットを脱ぎ捨てるとサクラに飛びついた。
俺を抱えたサクラが、バランスを崩して背後のドアに背中をぶつける音がした。
 
サクラの首を掻き抱いて、荒々しくキスをする。
サクラの唇は温かく。
俺のはまだ海水に奪い取られた体温が戻らずに冷たかった。
 
「hyde?」
「シよう、サクラ」
「えっと・・・」
「俺、冷たいから。温めろ」
 
こんな風にサカる俺を、サクラが拒めるはずがない。
 
「お前海水臭いんだけど」
 
俺を床に降ろしたサクラの手は、
ボタンを外した俺のシャツを
既に脱がしにかかっていた。
 
「シャワーは後や」
 
ベッドルームに入れば、もつれ込むようにしてベッドにサクラを押し倒した。
 
「あーー! 服脱げ! ベッドが濡れる!」
 
俺に押し倒されたサクラは慌てて服を脱ぎだした。
俺も下着ごとジーパンを派手に放り投げ、
 
「どうせ濡れるやんか」
 
サクラの首に喰らいついた。
左手はサクラの右手と繋いだまま。
 
「手、離せよ」
「嫌だ」
「触れないだろっ」
「触らんでもええ、絶対に嫌だ」
 
左胸の鼓動を感じ、そこに強く吸い付いて、血の集結痕を見てホッとする。
 
「あぁ、サクラ・・」
 
海臭い俺の身体に抱かれて、胸を吸われて、たったそれだけの
ことで熱く変化しつつあるサクラを握りながら、俺は安心し、
それから嬉しくなった。
 
口内に溜めた唾液をそのままサクラに滴らせて咥えると、
サクラは俺の髪の毛を空いている手で弄び始めた。
サクラの脈打つ動きに自分の中がざわついて、収縮し、
吸い込みたがっているのが分かる。
 
「あぁ、サクラもう我慢できひん」
 
腰を落としてサクラの全てを中に捉え、腰をゆるがせる。
足の甲から徐々に甘い痺れが腰にまで昇ってきた。
同時に背筋にも這い上がってくる甘美な感覚に背中をしならせると
サクラの尖端が内壁を強くめくり上げた。
 
「あぁっ!  あ・・・はっ・・・・あ・・あ」
 
悦楽が自分の身体の隅々まで行き渡るまで俺は動くことができない。
サクラの全てを感じ取って、そこに彼がいるというこれ以上にない確かな安堵感に、
言いようのない切なさを感じていた。
 
身体の緊張が一瞬解けて、ホッとしたのもつかの間、
今度はサクラが容赦なく突き上げてくる。
 
「ぅあっ・・はっ」
 
いきなり擦り上げられて思わず腰を浮かすと、
繋いだ左手ごと腰を掴まえられ、更に奥に挿れられた。
 
「あ・・・離」
「さないって、お前が言ったんだろ?」
「う・・ああ、そう。 離さない」
「どーだか?」
「離さないよっ!」
 
何故か腹が立って涙が出そうになった。
 
「バーカ」
 
サクラは俺の最奥で突き上げグラインドさせた。
熱い息が腰の動きに微妙に遅れて漏れてくる。
背筋が反り返り、身体が震え始めた。
 
「だ・・あかん・・や・・め」
 
早く遅く、強く緩やかにそんな抽き挿しをされて、
だんだん訳が分からなくなってきた。
前に倒れこんでるのか、後ろに仰け反っているのか?
全身がガクガクと痙攣し始める。
 
「あ・・・あっ・・・あああっ!」
 
登りつめる手前でまだ絶頂は来ない。
代りに再び押し寄せる快感。
 
「サクラ・・もっと・・・あうぅ・・ん」
 
収縮して更にサクラを感じずにはいられない中で、
勝手に襞がサクラに絡みつき、もっと奥へ奥へと動き始める。
 
「あっ・・あっ・・・あうっ」
 
サクラの上で淫らに身体をくねらせて、喘いで、
「もっと早く・・・もっと動いて」と恥ずかしげもなく女のようにわめいた。
 
大きな絶頂の波が押し寄せる感覚が迫り、
サクラの呻きを
耳にして、汗ばんだ手が離れないように指に力が入った。
俺をしごくサクラの左手に右手を添えて、「一緒にイってくれ」と頼んだ。

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