魅惑のハロウィン・ナイト


近づいてマジマジと顔を見られなければ男だとは思われない。
 
そんなおいしい状況を櫻澤が無駄にするわけはない。
 
チッタから車で数十分、目星をつけておいたラブホの一室。
ハロウィンムードで盛り上がっている町には最近は時々そういう客も来るようで、
シルクハットにタキシード、おまけに立て襟コートという
hyde以上に怪しい様相の櫻澤でも、
特にどうこう言われることなく入室することができた。
 
 
 
hydeは少し怒っていた。
 
「気が済むようにさせてもらう」
 
そう言った櫻澤を見たときにこうなることは予想がついていたし、
それで明日の打ち合わせにも、今日の打ち上げにも出れず、
きっと明日の準備の為に自分が取れる睡眠は、
わずかなものになることも分かっていた。
 
だが、怒っているのはそんな理由ではなく、
 
「ヤキモチなぞ焼くか」
 
と言いはしたものの、明らかにヤキモチを焼いていたことが
丸分かりの櫻澤がどうしようもなく可愛くて、
 
ホテルに連れ込まれてギョッとし、
今、目の前でシャツ姿となりベッドにくつろぎふんぞり返って座っている男に、
 
「どんなはしたない媚態で客煽ったんだかやってみろ」
 
などと酷い言われ方をされて立たされているにもかかわらず、
一向に自分の怒りの矛先が櫻澤に向かないほど、
彼の自分への気持ちと、普段では滅多に見られないタキシード姿の櫻澤に、
どれだけ自分がヤラレているかを
自覚してしまったからである。
 
「サクラ」
「何だよ?」
 
「格好えぇねぇ」
「誤魔化すな」
 
「誤魔化してないよ。 見慣れてないからドキドキした」
「俺はお前のそんな格好見て腰が抜けたぞ」
 
「そんなに悔しかった?」
「何が?」
 
「キス」
「ふんっ!」
 
ソッポを向いた櫻澤にくすくすと笑いながらhydeは近づいて行き、
彼の両足の間に滑り込むと首に腕を絡みつかせた。
 
「なぁ、サクラ。 今日の俺な、足スベスベなんやで」
「靴下脱がせんの楽しみやない?」
「この見せパン、可愛いやろ?」
「こんな格好今日限りや。 折角やからすぐに制服は脱ぎたないなぁ?」
 
「な? 客によりも、どんなふうに俺がサクラを煽るのかを見たない?」
「いやいや、もう充分」

 
まるで娼婦とのようなやりとりも、
いつもとは違う様相をしているせいか、
ハロウィンという特殊な雰囲気のせいか、
不思議と、言ったほうも言われたほうも羞恥心など沸き起こらず、
それよりもこんな子供染みたお祭りに便乗して
ソンナ気になっている自分たちが滑稽で、
自然と二人の間から笑いが生じた。
 
「trick! or treat!や、サクラ」
「生憎持ち合わせがねぇなぁ」
「んじゃ、悪戯されても文句なしやな」
「大人向けの悪戯なら受付ます」
 
 
       アッハッハッハッハッ!!!!
 
 
吸血鬼と小鬼はもつれ合いながらベッドに雪崩れ込む。
首に一噛み歯を立てられて、小鬼は小さく「あ」と叫び、
紅い目を輝かせ吸血鬼に悪戯なキスを仕掛ける。
 
噛みつかれそうになると舌を引き、
仄かに微笑んではまたキスをせがむ。
 
 
 
hydeは首を締めているタイをすっと抜き取ると、
ちらつかせながら櫻澤の首に掛けた。
 
「悪戯される前にどっかにやってまったほうがええよ?」
「折角の申し出だ。悪戯されないように有効に使わせてもらう」
 
櫻澤はhydeの手首を取り上げると、頭の上で括ってしまった。
 
「苦しくなっても自分の角にくらいは頼れるだろ?」
 
戯れたことをとhydeは笑って犬歯を見せる。
 
櫻澤はその犬歯には今度は見向きもせずに、
肌蹴させたシャツから覗く尖端に、血を抜き取ろうと喰らいつく。
 
hydeの胸はだんだん朱に染められて、
それだけで息が上がり苦しくなるのを、
櫻澤に言われたとおり、自分の角を握り込むことでまぎらそうとした。
 
「あぁ、ちょっと待てよ。追いつかない」
 
口で弄られることに睫を震わせながら、
あの帽子をちょっと上げた、あのしなやかな動きをした指なのにと、
容赦ない無骨な動きで肌を露わにさせられて少しhydeは抗議するが、
 
きゅうけつきのもくてきは生き血をすうことだけなんだぞ
 
などと、首を甘噛みされながら言われてしまった。
 
「しかも処女のな」
「あ、もったいねー」
 
hydeは太股まで吊り下げた下着と一緒に靴下も脱がされる。
一本は一緒に、もう一本は楽しみながら。
衣の下に伸びる滑らかな素足。
ぎゅっとそのふくらはぎを掴み、舐めた櫻澤の舌には、
いつもと違う感触と苦い味が残った。
 
「お前何か塗ったか?」
「調味料を少々なー」
「まずっ!」
 
「あん、残念。きゅーけつきさまがお気に召すかと思ったのにぃー」
 
棒読みな台詞に戯れたことをと今度は櫻澤が笑う。
 
いつもと違う様相から見慣れた身体を覗いて
「異形だな」と言う櫻澤に
「お互い様」と返すhyde。
 
それでも形をなぞられて自ら溢れさせた蜜を利用され
送り込まれる先ほどからの手淫による焦れったい刺激に
異形ながらも形を整えつつある。
 
それを咥えられて、櫻澤の肩に片方の足を掛けながら彼を見ると、
櫻澤の頭は剥ぎ取られずにいる自分のスカートの下にすっぽりと隠れていた。
 
「なんかさ、俺、変な気分なんやけど?」
「何が?」
「なんかさ、すっげー今更なんやけど・・・恥ずかしいわ」
 
蜜袋を頬張ろうとした矢先にそんな可愛いらしい事を言われて、
櫻澤がスカートから顔を上げると、
括られた両手で身体を横に支え、
顔を真っ赤にして自分の行為を
見ているhydeと目が合った。
 
金髪のウィッグが映え、
明らかに狼狽している色白のhydeの顔は、
益々紅く染まった。
 
「あ・あのさ、挿れてい? 俺・も、挿れたい」
「その前にスカート取ってよ」
「嫌だ」
「まだ早いよ」
「でも無理」
 
腰を抱え上げれば起きあがっていたhydeの上半身はベッドに倒れ、
そのタイミングと同時に櫻澤は少し強引に腰を進めた。
 
「は」
 
と、言ったまま目を瞑り唇を強めに引いているhydeの中は
やはりまだきつくて、もう少しお互いの身体が溶け合うまでには
ほんのちょっと掛かりそうだった。
 
「うん・・あぁ」
 
hydeの口元が緩み、自分の一部に彼が吸い付き始めたところで、
突然に二人の近くから軽快な音楽が流れ出した。
 
それは、hydeの耳元で無惨に丸められているジャケットの中から聞こえてくる。
 
「アニスや〜、嘘〜、ちょ、切って」
 
手を縛られているhydeが櫻澤にそう頼むと、
彼は幻想的なイルミネーションで発光している音源を取り上げ、
「よお」
と返事をした。
 
「何でアナタが出るノですかー!?」
「うん? hyde? ココにいるから換わるな」
 
目も当てられない格好をさせられたまま、もの凄い形相で櫻澤を睨み付け、
声にならない声で口をパクパク開けながら抗議をしていたhydeも、
耳元に携帯を持ってこられては応答しないわけにはいかない。
 
「アニス?」
「hyde!! サクラさんとなにしてるの?」
「何って・・・別に」
 
「ナニしてまーす」
 
携帯をhydeの耳に押し当てたまま櫻澤は自分の腰を一つグラインドさせた。
 
「ん・あはぁっ!」
 
会話に集中し、櫻澤の動向を油断していたhydeは
いきなり事を進められ、あられもない声を上げてしまった。
 
「ち・ちょっとーーーー!! 何してルのデスカーーー!!!」
「んっ・・ ァアホッ! 切れ携帯! あっ・・・サ・サクラッ! やっ!」 
「☆●◇ーーー▲□★※●ーーーー!!!!」
 
もはや電話の向こうで何を叫んでいるのか分からないアニスの声を聞きながら、
櫻澤は下から睨み上げる充血した目に
更に自身を熱くさせストロークを繰り返し、
hydeの耳から自分の耳に携帯を宛て代えて応える。
 
「うん。 じゃ、こーゆーことで」
「コーユーことってナニ!」
 
「まぁ、あれだな、hydeは明日ココからご出勤ってわけ」
「チョット! ナニイってー」
 
ブッチー!
 
一生の内でこんなに携帯の電源を切るという行為が楽しいと思うことは、
もう後にも先にもないだろうと思いながら、
櫻澤はその電源を切ると無造作にベッドの脇に転がした。
そして、
 
「はぁ、サクラ・・・・もうそおゆう子供みたいなのやめてぇよ」
 
目を今だ閉じたまま、
下がった双眉で赤面している
hydeの身体を引き起こし、自分に跨がせた。
 
「う・・あぁ・・・くっ」
 
自重を借りて息の詰まるような圧迫感がhydeの奥を犯していく。
縛られた両手で不自由そうに身体を支える彼の姿を下から眺め、
 
「そうしていると女子高生に見えるな」
 
などと、hydeの羞恥心に更に追い打ちを掛けるような台詞を吐く。
 
「エロ親父。 少し腹へっこめろ。 跨ぎにくいんやっての。
 そ・それに・・・お前、腰回してるだけやなくて〜〜・・・・・・・・」
 
「回してるだけじゃなくて?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 
本当に小娘苛めてる気分だ。

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