In a white room


それから一週間後のことだった。
あれからtetsuは、俺と入れ替わりでずっとあそこで寝泊りしていたらしい。
苦しむこともせず、本当に眠るようにだったそうだ。
俺はそのときばかりは神様に感謝した。
実際は、それは医師の技術と努力なのだろうが。
 
tetsuは「大好きだよ」と言ってもらえたのだろうか?
hydeは「良き夫」「良き父親」として一週間を過ごせたのだろうか?
 
余計なお世話だな。
 
身内葬でというhydeの希望のリストには、当然ながらtetsuやkenやyukihiro
が入っていたが、俺は入っていなかった。
もちろん、入っていたとしても行くわけはないが。
 
tetsuはやはり泣かなかったようだ。
そうだ、アイツは一人でこっそり泣くんだ。
意外だったのがyukihiroで、泣いていたkenが泣き止んで慰めに掛かるほど
ボロボロだったらしい。
 
リストには入ってなかった者に、hydeは一人一人短いながらも手紙を
書いていた。
俺と一緒にいたあの空間で、hydeが時々何かを書いていたのを思い出した。
 
ファンにも当然ながらメッセージを残していたhydeだが、
メディアでは時々、常軌を逸したファンの行動が取り沙汰されていた。
 
 
驚いたことに、hydeは自分が持ち得る権利の大半をtetsuに渡していた。
まぁ、tetsuならそれをhydeの家族の為に有効に使ってくれるだろう。
最終的に一番信用されていたのはtetsuということだろうか?
tetsuも、「こっの忙しいのに、余計な仕事が増えたわ」
と、まんざらでもない様子だった。
 
 
俺はまだ実感がない。
hydeのことも、自分が生きてるのだということも。
外にも出ず、ずっと家に篭っている。
検診に来いと何度も電話をくれていた医者も、最近はもう何も言ってこない。
 
 
 
 
 
「宅配でーす」
ある日、そんな爽やかな掛け声で起こされ、ノロノロと重い足を引きずって
玄関の扉を開けた。
髪も髭も伸び放題、家の中でサバイバルな人生でも送っているかのような
俺に、宅配のにーちゃんはちょっとビビッていた。
 
「お届けものです。指定日配達で」
 
「え〜〜〜・・・・ハ・ハイド?様からですけど」
 
にーちゃんから荷物を引ったくりリビングに取って返した。
荷物を解く手が少し震えていた。
 
 
 
『 やぁ! サクラ  元気か?
  
  俺はこっちでも幸せにやってるで
 
  最初で最後の誕生日プレゼントや!
 
  この身の全ての真実を込めて
 
  birth! おめでとう
 
                    hyde 』
 
 
包みからジャラッと音を立ててロザリオが出てきた。
hydeがいつも見につけていたあの十字架だ。
 
 
小さな十字架を掌に握りこみ、唇を寄せた。
hydeの温もりがまだ残っているかのようだった。
hydeと過ごした、あの奇妙だが穏やかな、
そして、美しく幸せだった
日々を思い出した。
 

あの日から感情が麻痺してしまっていた自分が泣いていることに
気がついた。
hydeが逝ったときにも出なかった涙。
ロザリオが掌ごとビショビショだ。

「冷ってぇな。 エエ歳して鼻水垂らすな」

そんな風にでも言われそうな勢いだ。
まだこんなに身体に水分が残っていたんだとびっくりした。
 
 
 
hyde、俺はきっと風の中でもお前を感じるよ。
美しい花の中にお前を見つけよう。
雨が降ったらお前の声を聴く。
光の中ではお前のぬくもりをさがそう。
 
 
 
そうして、寝る前には十字架に祈りを捧げ、お前にキスをしよう。
 
そうやって、この生を静かに生き切っていこう。

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06.07.09
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